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馬十の辻に風が吹く 第三章―2


 二人の可愛らしい言い合いを聞いて、 葦若が得意げに笑った。
「うふふ、 壊れませんよ。
 からくり名人に相談して、 揺れが少なくなるように 特別な工夫をしたのです。
 とても良い乗り心地になりました」
「どんな工夫なのかしら。 知りたいです」
 桜子が目を輝かせる。
「まだ秘密ですが、 試しに乗ってみますか? 
 ただし、 飛ばすのは無しです。 怖いですから。
 …… 私が」

 そういう次第で、 桜子と幸真千が乗って来た馬車は 先に空で返すことになった。
 同行している石動原家の家人、 兄多遅(えだち)は腕が立つから 何かあっても心配はいらないと、
 護衛に付いていた騎馬兵二騎も 追い払うように一緒に帰してしまった。

 葦若の馬車を 外から内から ためつすがめつしながら、
 二人は 秘密を探り当てようと 一所懸命頑張ったものの、 ついに降参。
「どこが工夫なのだ。 けちけちせずに教えてくれ」
「馬車を こんなにじっくり見たのは 初めてです。 全然判りません」
 二人が諦めて おとなしく馬車に乗るまで、 葦若は黙って笑いながら待った。
「実際に乗って走らせてみた方が、 良さが解ります。 出発しましょう」

 馬車が動き出すと、 二人は目を見張った。
「本当だ。 揺れ方が少ない」
「これなら 長く旅をしても楽ですね。
 怪我人や病人を運ぶにも向いています。
 それに、 おしゃべりをしても 舌をかまずに済みます」
「なるほど。 他の人の役にも立つのか。 気が付きませんでした」
「えっ!」 「うそーっ」
 葦若のとぼけた反応に、 二人は呆れて じっと顔を見てしまった。
 見つめられてしまった葦若は、
 その場の空気をごまかすように、 高笑いなんかをしてみる。
「いやーっ、 わっはっはっは。
 わが身を楽にすることばかりを考えていました。
 他にも役立つとは、 いやはや何とも、 実に愉快愉快」

 三人の のどかな会話を乗せて のんびりと進む馬車が、
 何もない所で 不意に止まった。
「どうしたのだろう。 馬がやる気をなくしたのかなあ」
「そんなはずはありません。 我が家の馬は やる気のある馬です」
 騎馬の兵士が一騎、 行く手に立ち塞がっていた。
 衣服が一部焼け焦げ、 煤けている。
 良く見れば、 桜子たちの馬車に付いていた護衛の 安太良(あたら)だ。
「どうした。 何かあったのか」
 御者の隣に乗っていた兄多遅が、 鋭く問いかける。



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