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馬十の辻に風が吹く 第二章-8

 何事も起こらないままに、 幾日かが過ぎた。
 その間に、 真咲は警戒すべき要所を押さえていった。
 幸真千が 剣の稽古をしていると聞いて、 こっそり見に行ってみたが、
 まるで役には立ちそうにない。 まだ八歳である。
 表面的には 平和な世が続いているから、
 実戦に巻き込まれたことも、見たことさえ無いと思っていい。
 大人を相手にして 多少なりとも身を守れるようになるには、
 まだまだ 時間がかかりそうだ。

 真咲は 二人に逃げ方を教えて見ることにした。
 それなら 手早く役に立つはずだ。
 大神堂という祠らしい建物の辺りには ほとんど人目が無い。
 うまい具合に 登りやすそうな松の木も生えている。
 まずは木登りをさせた。
 日常の動きとは違う身のこなしを覚えるし、
 高い所に隠れて 危険をやり過ごす方法にも使える。
 やってみると 二人ともなかなかに筋が良く、 面白がって張りきった。
 真咲にすっかりなついて、 事あるごとに まとわりついてくる二人が、
 お付きの人間を振り切って向かう先は、決まって真咲の所である。

「真咲―、 余のしゅうしゅう品を見せてやる約束であったな」
 大事な事を思い出したという勢いで、幸真千が飛び込んできた。
「特にお約束は していませんが」
「余と真咲の仲だ。 えんりょはするな」
 さて、 どうやって断ろうか と考えながらはずした視線の端に、
 雪明りの式部が やってくる姿をとらえた。
 捕まったら 謝るしかないが、 教育上、いさかいは見せたくないものである。

「拝見しましょう!  収集品。
 ささ、 早く参りましょう」
 得意げな幸真千を急がせれば、少し困った顔の桜子も同行してくる。
 予想通り ろくでもない収集品のようだ。
 そそくさと角を曲がれば、前方から一人やって来た。

「げっ」
「これはこれは、 皇子様と皇女様。
 風変わりな先生も ご一緒ですか」
 葦若の宰相だ。
「おお、とくべつに宰相にも 余のしゅうしゅう品をひろうしてやる。
 いっしょに来い」
「お忙しいのじゃないかしら。 なんてったって宰相ですもの。
 お仕事の御用がおありでしょうから」
 冗談じゃない。
 『個性的』から『風変わり』に変わったのは、 良い兆候とは思えない。

「是非拝見したい」
 葦若は 空気を読まない男だった。



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