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馬十の辻に風が吹く 第二章―7

「まだ諦めていない ということですか? 
 でも、 石切親王は
 陛下から 太政(だいじょう)大臣になって 政務を助けて欲しい という要請をお断りになり、
 表舞台から身を引かれた と聞いていますけれど。
 ご本人にその気が無ければ、 周りがいくら画策しようとも どうにもならないんじゃ……」
「どうなのでしょう。
 人の心の中は 誰にも容易に推し量れるものではありませんから、
 どなたが何を考えていらっしゃるものやら 分かりませんことよ。
 それに、 いつなんどき 新たな野心家が登場しても おかしくありませんでしょう」
「おかしくないんですか……」
 真咲は 思わず間の抜けたあいづちを打ってしまった。
 話の内容を知らない人間が見れば、 緊張感のない姉妹にしか見えないだろう。

「あら、 そうだわ。
 真咲さんも 不審な事に気が付いたら、 ささいな事でも知らせて下さいな。
 他に質問は有りまして?」
「えーと、 石切親王は、 今は どうしていらっしゃいますか」

「真咲さん。 そんな事も調べずに来たのですか。 困ったものねえ。
 陛下が それでも協力を求められたのですが、
 親王は 中務卿も式部卿も 内裏に関わりの深い地位には難色を示され、
 やっと大蔵卿をお受けになられ、
 地味に 金勘定に明け暮れていらっしゃいますわよ。
 そうそう、 奥方が 内裏で大后(おおきさき)様に仕えていらっしゃるわ。
 大蔵様と呼ばれている方がそうです」

 大后とは先の帝、 北山院の后であるが、
 寂しい暮らしは嫌だ と内裏に残っている。
「まだお会いしていないようです」
「出しゃばる方ではありませんからね。 ではこれで」
 声と同時に 花澄の姿は消えた。

 いつの間にか 少し開いていた板戸から 真咲も廊下に出た。
 戻ろうとして角をまがった時、 見た覚えのある女官が やってくるのが見えた。
 雪明りの式部である。
 先方も 真咲の姿に気付いたのか、 足を速めて近づいてきた。
 まずい。 千振のことで怒っているのかもしれない。
 触らぬ神に祟り無しだ。 ここは逃げておこう。
 逃げ脚には もちろん自信がある。

 真咲は逃げた。



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