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馬十の辻に風が吹く 第二章―6



「もちろんです。 ここを何処だと思っているのですか。
 権力を手に入れたがっている方など 珍しくもなんともありませんことよ。
 むしろ 独創性に欠けると言っても良いくらいに ありふれていますわよ。
 四年前にだって、 朝廷が 真っ二つに分裂しそうになったではありませんか」

 先の帝が 北山に館を建てる計画が漏れ、 退位しようとしていることが明るみに出た時、
 次の帝をめぐって 朝廷の意見が割れた。
 当時 東宮だった今上帝は、
 凡庸を絵にかいたような 見ばえのしないぼんやりさんだったのに引き換え、
 第二皇子の石切(いわきり)親王は 聡明で力強く、
 文武共に秀(ひい)でていると認められており、
 何より 闊達(かったつ)で 堂々とした見ばえの良さから 官民ともに人気があったから、
 東宮を廃して 石切親王を帝に立てようとする一派が動き出したのだ。
 東宮派と石切派が対立して、 不安な空気が漂った。

 その時、 派閥の争いから起こりうる事件を 未然に防ぐ為もあって、
 花澄が 内裏に潜入したのだ。
 内裏には、 高官や有力貴族の妻や縁者が女官に上がっている。
 ある種、 裏情報の宝庫と言って良い。
 石動原一家が惨殺されたのは、 まさにそんな折だった。

 当時 右大臣の位に在った石動原は、 あえて言えば東宮派であった。
 というより、 まことにもって 正論の持ち主だった。
 何の落ち度も無い東宮を廃する理由が無い と主張したのである。
 しつこいようだが、 今上帝は 幼い頃より首尾一貫して ぼんやりさんである。
 『沈香(じんこう)も焚(た)かず 屁(へ)もひらず』 の見本と言って良い。
 目覚ましい事は何一つ無いが、
 だからと言って 非難されるようなことも何一つ無かった。
 明らかな理由もなしに 東宮を廃太子にしては 道理が通らない。
 秩序が乱れる元である。
 というのが その主張であり、
 次第にその意見にまとまりそうな勢いになりつつあったその時、
 末っ子の葦若一人を残して、
 人望厚い妻、
 頼りになる後継者と思われた長男と思慮深い次男、
 婚礼間近だった美しい娘 と共に何者かに殺された。

 右大臣の母が危篤だ という偽の連絡におびき出されたという以外には、
 犯人の正体を含めて、 未だにすべてが謎である。
 皇位争い以外の理由は 誰も思い付かなかった。

 先代帝は 激怒した。
 東宮と石切親王には 通常の警備の他に 真神門一族が張りついていたが、
 隙を突かれるように 信頼に足る右大臣を失ってしまったことに激怒した。
 怒り過ぎて、 隠居所にする予定の北山邸の完成を待たずに さっさと退位してしまい、
 なし崩し的に 東宮が即位した。

 代が替わっても しばらくの間、
 今は北山院と呼ばれている先代帝が 内裏に居候をしていたくらいに
 慌ただしい成行きになった。
 石切親王を立てようと画策していた廷臣たちは、
 院のあまりの怒りようを恐れて、 目立たないように身を引いていった。

 労せずして、朝廷の高官から 強硬な石切派は姿を消した。



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コメント
1966: by 彦星 on 2014/02/13 at 21:53:22

(*・д・)ノ*:゚★こんばんヮ☆・゚:*:゚
いつも読み逃げですが・・・
ランキング全部押していますよん♪
応援♪ポチッ☆彡

1968:Re:彦星様 by しのぶもじずり on 2014/02/13 at 23:39:25 (コメント編集)

いつもありがとうございます。
わたしも読み逃げしてます。

雪の中の節分草 とってもきれいです。
ランキングがするりと上がりましたね。さすがです。

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