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赤瑪瑙奇譚 第六章――1



 翌日、 迎賓館のユキアの部屋に、 迎賓館の係りの者が来た。
「何の用ですか」
 メドリが応対する。
「お手紙が届きましたので、 お持ちいたしました」
「ありがとう。 げっ、 おじゃる丸」
 
 手紙を受け取っても 使用人は 立ち去らない。
「あの、 いつも姫君のお傍近くに居る侍女といえば、 あなた様ですよね」
「はい、 もちろんそうです。 何か……」

「入り口に、 カムライ殿下が お待ちになっています。 侍女の方に お会いになりたい と仰せです」
「姫様ではなく、 私ですか」
「左様にございます。 姫君には 内密で と仰せです」
 メドリは 言われたとおりに、 手紙をユキアに渡すと 部屋を出た。

 入り口にある 接客用の場所で待っていたカムライは、 破顔した。
「ああ、 やっぱりあなただ。 昨日は ありがとう」
 メドリは しまった と思った。
 姫様の顔さえ ろくに見ていないカムライが、 まさか 侍女を覚えているとは思わなかった。

「見たことがあると思ったが、 やっと思い出したのだ。
 ユンと一緒にいるところを 二度会ったよね。 知り合いなのだね」
「……」

 こんな、 誰が何時通るかもわからない場所では、 口に出せることに限度がある。
 マホロバの姫が、 こともあろうに 剣を振るって 悪人相手と 立ち回りを演じたなどと、
 おおっぴらにできることではない。

「あの後、 二人とも 風のように去ってしまったから、 お礼も言えなかった。
 ホジロが 知らせてくれたとか……。 ホジロに聞いても 要領を得ないのだ。
 連絡が取れることもあれば 取れないこともあって、 昨日は たまたま連絡がついた とか言っているし、
 あなたに聞いたほうが早いかと思って 聞きに来た」

 なにを聞きに来たのか分かったが、 やっぱり ここでは言えない。
 昨日の事件は、 おおごとにしないよう 有耶無耶な扱いになっていた。
 半端なゴロツキが、 皇太子と気がつかずに 襲ったあげくに、 仲間割れで 殺しあったことになっている。
 しかし、 本当は 明らかに 皇太子暗殺未遂事件なのだ。
 どんな形であれ、 マホロバの姫が 関わっていい事ではない。

 ここで ユンの正体を明かしてしまえば、 絶対驚くに決まっている。
 感情表現が 控えめだとは 決して言えない この青年は、 下手をすれば 大騒ぎをする。
 たとえ、 傍(はた)からは 何に驚いているのかが よく判らなくても、
 カムライが吃驚仰天する姿は、 興味を引かずにはおかない。

「面倒なことを聞きたいわけではない。ユンの素性を知りたいだけだ」

 そこが 一番 面倒なのだ。


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by まとめwoネタ速neo on 2012/06/13 at 01:41:34

 翌日、 迎賓館のユキアの部屋に、 迎賓館の係りの者が来た。「何の用ですか」 メドリが応対する。「お手紙が届きましたので、 お持ちいたしました」「ありがとう。 げっ、

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