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馬十の辻に風が吹く 第二章―3

「さすがに広いわ。 敷地は どれくらいあるのかしら。
 建物の外観も美しいのでしょうね。
 じっくりと 広さと美しさを感じてみたいものだわ。
 塀伝いに ぐるりと回りましょう」

 勇んで歩きだした三人だったが、
 いくらも進まないうちに、 今度は あっさりと見つかってしまった。
 初老の男が駆け寄って、 深々とひざまずいたのだ。
「皇子様、 皇女様、 御用がございましたら 係りの者を差し向けます。
 先日のこともありますゆえ、 どうか部屋にお戻りください」
 身につけているものから 位が低いことがわかるが、
 きっぱりとした物言いには、 後には引かない心構えが見える。
 言っていることも間違っていない。
 とりあえず 退却するしかなかった。
 すごすごと戻れば、 幸真千も桜子の部屋まで付いてきた。

 姿を見つけて飛んできた守役に、
「ごくろうである。 しばし待て」
 鷹揚(おうよう)に声をかけると 真咲に振り向き、 ニカッと笑った。
「ほんじつは、 つめが少々あまかった。
 気を落とすな。 こんどは 余のしゅうしゅう品を見せてやろう」
 機嫌良く 守役に連れられて帰って行く。
 けして一人にはなるな と各方面から注意されているという。
 真咲からも しつこく言い聞かせたので、 大丈夫だろう。

「しかし…… 収集品……、 う~ん」
 あまり良い予感がしない。
 そういえば、 飛丸も 蝉や蛇の抜け殻とか、
 蟷螂(かまきり)の卵とか、 干からびた蜥蜴(とかげ)とかを収集していたのを思い出した。
 どうして 世の中の男子には、
 役に立たないものばかりを集める 変な癖を持つ子が多いのだろうか。
 理解に苦しむ。

 桜子が 鼓の稽古をする時間に 安全を確認し、 一人で垣を調べた。
 しつこいくらいに目を凝らし、 時には叩いたりもして垣を調べたが、
 事件の直後にも 内裏では調べたはずだ。
 当然のことながら 異常は見当たらない。

 北東の隅に 小さな建物があった。
 物置かと思って近づいてみれば、 『大神堂』と書いた扁額が掲げられており、
 注連縄(しめなわ)が張ってあることから 祠(ほこら)らしいと判るが、
 古びている上に 手入れもされている様子がない。
 その陰に隠れている部分も もれなく確認したが異常なし。
 やっぱり簡単にはいかない。
 任務終了とはいかないようだ。
 とにかく五里霧中だ。
 ただ考えてばかりいても らちが明かないときは、
 情報収集でもしてみるしかない。



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