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馬十の辻に風が吹く 第二章―2

 裏からのぞく びっくり内裏めぐり。
 そんな感じだ。
 庭木の陰を移動したり、 渡殿(わたどの)の下をくぐったりは 当たり前。

「あのう、 殿下。
 何故 縁の下を通らなくてはいけないのかしら」
「決まっている。 おもしろいからだ」

 おかげで、 表から堂々と行ったのでは 決して分からないだろう通り道や、
 下働きの人たちの怪しい噂話まで もれなく付いてくる。
 あまり使われていない納戸(なんど)の中を 突っ切ったりするのだ。
 真神門情報で、 あらかじめ内裏の図面に目を通していて良かった。
 頭の中にしまってある図面と突き合わせて、 位置を確認していくことができる。
 そうでなければ、 自分がどこにいるのかさえ 怪しくなってしまうところだった。
 珍しい物も、 いろいろ目にすることができた。

「あっ、 あの命婦(みょうぶ)、また つまみ食いをしている。
 そろそろ肥ったとか言って 騒ぎ出すぞ」
「山吹の少納言は、 殿方から届けられた文(ふみ)に 点数をつけるのが趣味なのです。
 今日の文は 不出来なようです」
 ひそひそ声の 興味深い解説付きである。

「いつもお二人は、 このように移動しているのですか」
 建物の北、 裏庭に出たところで聞いてみた。
「久しぶりだ」
「見つかってはいないと思いますが、 ある方から
『お行儀よくしていますか。 皇子と皇女なのですから、 節度ある行動をなさい』
 とお説教されたのです。
 いつもは穏やかな方なのに 珍しく怖いお顔だったので、
 近頃はおとなしくしていました」
 真咲も『ある方』の意見に全面的に賛成したいところだが、 かなり参考になった。

 なにしろ、 帝の御座所である白桐(はくとう)殿のすぐ近くまで、 人目につかずに行けたのだ。
 さすがに中は のぞけない。
 ちょっと不用心な気もするが、 内裏は 頑丈な築地垣で囲まれており、
 欠かさず 門番が警備に立っているから 大丈夫なのだろう。

 なるほど、 どうやって野犬が入ったのかは 大いなる謎だ。
 建物の中から湧(わ)いてきたとは思えない。
 周りの垣を確認するべきだろう。
 まさかとは思うが、 万が一、 垣に穴でも空いているようなら、
 やっぱり事件ではなく 単なる事故ということになる。
 野犬は そこから迷い込んだのだろうし、 もしかしたら 河童も入って来たのだ。
 一件落着になる。
 真咲の初仕事は終わりだ。
 屋敷に帰ったら、 苦い初恋を癒す為に しばらく引きこもろう。
(見たかったなあ、 河童)
 気の早いことを考えながら、 二人に提案してみた。



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