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馬十の辻に風が吹く 第二章-1

 作戦もなく、 努力を払うこともなく、
 保護すべき対象の二人に 懐かれてしまった。

 桜子皇女は呑み込みが良く、 教材として用意した書物を読ませるだけで、
 とんとんと吸収していく 手間いらずの教え子だった。
 時折してくる質問も 的確である。
 たまに、 真咲にも答えられないような鋭い質問もしてくる。
 飛丸の教育係をしていて良かったと思うのは そういう時である。
「よいところに気がつきました。

 「せっかくですから、 すぐに答えを聞くのではなく、
 ご自分で考えてみましょう。 その方が身につきます」
 出来の悪い先生の 必殺技である。
「はい。 そうします。 深いわぁ」
 桜子は勝手に考え、 図書寮(ずしょりょう)に出かけて調べる。
 そこが 飛丸とは大いに違うところである。
 彼の場合は 結局分らないまま、
 時間稼ぎをしている間に 真咲がなんとかする羽目になる。
 教える方が なんぼか大変だ。

「解りました。 答えは一つとは限らないのですね。
 大切なことを覚えました。 真咲先生って すごいです」
 まことにもって、 手間いらずの優秀な教え子である。
 何もしていないのに、 尊敬までされてしまった。

「真咲。 東の庭に行くぞ」
 幸真千皇子も、 自分の守役をまいては 一緒に居たがる。
 虫や蛙や蜥蜴(とかげ)、 蛇さえ平気な真咲が いたく気に入ったらしい。
 他の女官では、 すぐに悲鳴をあげられて、 全く話にならないのだとか。
 二人とも 真咲にべったりである。
 第一段階は成功だ。

「朝に行ったじゃないですか。 またですか」
「虫にも それぞれ気に入りの時間があるのだ。
 あさ、 ひる、 ごごでは、 飛んでいる虫がちがうぞ」
 二人に誘われて、 何度か東の庭に足を運んだが、
 人に出会ったのは 最初の一度きりである。
 めったに訪れる者がいないようだ。
 おそらく、 そんな場所があることさえ知らない人が ほとんどなのかもしれない。
 そもそも 庭とは言い難い。
 となると、 皇女と皇子が ちょこまかと出没していることを知る者も限られてくる。
 分かるのは そこまでだ。

 一緒にいれば 安心ではあるが、
 先々を考えれば、 原因を突き止めて取り除きたい。
 事件だとしても、 皇家のおまけみたいな おチビ二人を襲う目的が分からない。
 東宮と、 聡明だと評判の第二皇子が居る。
 桜子も 幸真千も 縁組は未定であるが、
 大きく勢力が変わるような相手は 今のところ見当たらない。
 勢力争いに繋がるとも思えないのだ。

 宮中での二人の身辺を知るにつけ、
 単なる不幸な事故が続いただけなのではないか と思ってしまう。
 しかし、 仕事は仕事だ。
 きっちりこなそう。

「東の庭も良いのですけど、 私は 宮中のことをまだよく知りません。
 勉強したいのですが」
「おお、 そうか。 まかせておけ」
「先生に教えるなんて、 わくわくします」
 都合よく張り切る二人であった。

 皇女と皇子が一緒なら、 たいがいの場所に出入りできるはずである。
 そう思っていたのだが、 少々趣(おもむき)が違った。



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