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赤瑪瑙奇譚 第五章――7



 カムライ王子が 不逞の輩に襲われた、
 という警邏の役人からの知らせに、 城内は騒然とした。

「して、 無事なのか」
 カリバネ王が、 ウガヤに尋ねた。
「詳しいことは まだ分かりませんが、 お命は無事とのことです」

「早すぎる。 まだ動かぬと思っていたがな。 なにが起こっているのだ」
「われわれの予想とは 違う動きになっていますね。 読みが 間違っていたのでしょうか。
 それとも 計画を変えなくてはならないことが、 連中の身に起こったのか」

「ウガヤ、 ミノセが辻斬りをしているという噂は どうなった」
 部屋には 二人きりだったが、 それでも 王はいくらか声をひそめた。

「辻斬りが起こったのは 昨夜のことです。 それが、 既に ものすごい広がりようで、 作為を感じますね」
「まさか 本当にやってはいまいな」
「たぶん」
「情けない返事だ、 おまえらしくも無い」
「予想の範囲を超えていました」
 カリバネは 冷静にならなくてはならないというのに、 苛立つ気持ちが 隠せなかった。

 そこに あわただしく 知らせが来た。
「警邏隊からの連絡が入りました」
「申せ」
「殿下が 犯人たちを捕らえて 転がしてあるとのことでしたので、 引き取りに行ったところ、
 全員 何者かに殺されておりました」
「……手がかりを消したか。 さて、 この先どう動くかだな」


 一方、 迎賓館に戻った ユキアとメドリは 疲れきって、 倒れるように座り込んだ。
「何と言うことでしょう。 こんな酷い事は初めてです。 マホロバでは あり得ません」
 メドリが怒って、 吐き棄てるように言った。
「……」
「かといって、 さっさと帰るわけにもいきませんけど。
 カムライ殿下が ご無事でようございました。
 暗闇の中で 壁をよじ登っていらしたとは 思いもしませんでしたが、
 そうでなければ 危ないところでした」

 カムライは 壁をなんとか登ってはみたものの、
 地面の上に 直に貼られた床板の切れ目が、 壁から離れた位置だった為、 出られなかったのだ。
 床が開いた時、 壁にへばりついていたカムライは 奴らの死角にいた。
 もし、 おとなしく穴の底に じっとしていたなら、 射殺(いころ)された可能性が 充分にあった。
 どんな窮地にあっても、
 そのとき自分に出来ることを、 迷い無くしてしまうカムライだったからこそ 助かったのだ。

 ユキアは ますます気に入った。
 目立つことで 自分が役に立つというなら、 目いっぱい目立ってやろうじゃないの。
 すでに起こってしまったことに 文句を言っていても 始まらない。
 今、 自分に出来ることをしよう、 と改めて 覚悟を決めた。

 メドリが、 やっと気を取り直して立ち上がり、 異変に気づいた。
 もう一つ、 別の災難が 待っていた。
 鏡台が 荒らされている。

「姫様、 変です。 あちこち物が動いて、 置き場所が 変わっています」
「泥棒みたいね。 翠玉の首飾りが 無くなっているわ」

「セセナ様からの贈り物の あれですか。 大変。 全く酷い事ばかりが 次から次へと 何なんですの」
 無くなっていたのは、 首飾りだけだった。 他のものには 被害がない。

「妙な泥棒ね。 他にも高価なものがあるのに」
 ふいに メギド公のことが 頭をよぎった。

 晩餐会では、 あの首飾りに 一方ならぬ興味を示していたが、
 公が身に着けている装身具からしても、 会話の内容からしても、 とても宝玉に造詣が深いとは思えない。
 そういえば 緑色にこだわっていた記憶もある。 緑色好きなのだろうか。
 マホロバにいる知り合いに、 緑色好きで、 持ち物が全て緑色 という変な小父さんがいる。
 しかし、 メギド公の衣装の何処にも 緑色は 使われていなかった。
 理由はどうあれ、 今のところ 一番怪しい。

「ユンは 消えようと思っていたけど、 こんな様子じゃ、 そうも行かないかもしれないわ」


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by まとめwoネタ速neo on 2012/06/10 at 13:00:29

 カムライ王子が 不逞の輩に襲われた、 という警邏の役人からの知らせに、 城内は騒然とした。「して、 無事なのか」 カリバネ王が、 ウガヤに尋ねた。「詳しいことは まだ分かりま...

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コメント
137: by flowerh on 2012/06/09 at 22:35:04

はじめまして~

いつも読増させていただいていますが、
すごいですね。

きちんと筋立てだって、
長い内容。

それも間隔も短いですし。

これからの展開楽しみにしています。

138:Re: flowerh様 by しのぶもじずり on 2012/06/09 at 23:03:35 (コメント編集)

コメント ありがとうございます。

もう少しで、ブログを始めて三カ月になります。
息切れしないように がんばって続けたいところです。

139:管理人のみ閲覧できます by on 2012/06/09 at 23:16:59

このコメントは管理人のみ閲覧できます

140:Re: 鍵コメP様 by しのぶもじずり on 2012/06/10 at 14:05:38 (コメント編集)

こちらこそ、気を遣わせて申し訳ない。
当方は初心者でもあり、乗り切り方が分かりません。
鍵コメ様なら、上手くかわせるのでしょうけど、私はまだまだ。

141: by 園長 on 2012/06/10 at 16:43:32 (コメント編集)

ここ数日 ブログ回りもできなかったので
まとめ読み♪
まだまだ謎がいっぱいだね。
ユンの活躍が続きそうで嬉しいわ(*^。^*)

143:Re: 園長様 by しのぶもじずり on 2012/06/10 at 17:51:25 (コメント編集)

いらっしゃいませ。
クライマックスはこれからです。まだまだ活躍します。
よろしければ、この先もお付き合いください。
頑張ります!

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