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馬十の辻に風が吹く 序章-2

 太久郎の足が ふいに止まった。
 おかしい。
 どうやら しばらく立ち止まっていた馬車が、 脇道にそれてゆく。
 道幅も狭く、 藪(やぶ)が邪魔になって 馬車では不便な道だろうに。

 と、 突然気配が乱れた。

 屋敷を目指していた太久郎は、 進む方向を変えた。
 真咲がとまどったのは 一瞬だった。
 何が起こったのか分からないままに、 すかさず後を追う。

 異変に気づいた者は 他に無かったろう。
 手際の良い仕事だったようだ。
 兄妹が駆けつけたときには、 惨状は ほぼ出来上がっていた。
 血まみれの少年を取り巻いた 四、五人の者たちが剣を振りかぶり、
 少年の命を奪おうとしていた。

 太久郎は 駆けつけざまに剣を抜きはらい、 低い声で問う。
 「何をしている」
 領地内での狼藉(ろうぜき)を見逃す気はない。
 少年を襲っていた者たちは 覆面で顔を隠しているから 表情は うかがえないが、
 舌打ちが聞こえた。
 腕に覚えのある者たちなのだろう。
 瞬時に 太久郎を侮れない相手と判断したようだ。
 動きが慎重になる。

 太久郎が、 ずいと一歩踏み出した時、 どこからか矢が射かけられた。
 太久郎は 払い落としたが、 くぐもった悲鳴が上がり、
 少年が 背中から射抜かれて どうっと倒れた。

 それを見届けた襲撃者たちは、 身をひるがえして逃走した。
 太久郎が あとを追う。

 なす術(すべ)も無く見ていた真咲は、
 ようや 動いて その場を見回した。
 二頭立ての馬車は倒れ、
 この国では見ることのない 大柄な馬ごと斬られている。
 開け放たれた扉からはみ出すようにして、 初老の男が事切れていた。
 他にも 中で死んでいるらしく、
 一人の人間からのものとは思えない量の血が、 車体の下を流れ出ていた。
 もはや 中からは こそりとも音がしない。

 地面にも、 倒れて動かない体が 何体か転がり、
 乗り手を失った小柄な国産馬が 一頭、 血の臭いに怯えたか、 立ちすくんでいた。
 離れた場所から、 いななきが聞こえる。
 逃げた馬もいるのだろう。
 倒れている人たちを手当てしようにも、
 手遅れなのは 一目瞭然(いちもくりょうぜん)に見えた。
 かすかな音を耳にして、 真咲は振り向いた。

 誰か 動いた。
 まだ生きている人がいる。
 せわしなく見回して、 音の原因を探った。
 生きているのなら 間に合うかもしれない。



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コメント
1914:明けまして by ネット on 2014/01/07 at 21:08:20 (コメント編集)

おめでとう御座います。
新作が始まりましたね~今年もヨロシクお願いします。
太久郎18歳、真咲が12歳、どの俳優さんに演じていただこうか、楽しみが膨らみます♪

1915: by lime on 2014/01/07 at 22:21:53 (コメント編集)

早くも血塗れた惨状が広がりましたね。
今回はややシリアスムードが漂いますね。
この兄妹が中心に物語が動くのでしょうか。
キレの良い始まりで、この先が楽しみです。

1916:Re: 明けまして by しのぶもじずり on 2014/01/07 at 23:18:01 (コメント編集)

ネット様、おめでとうございます。
今年も宜しくお願いします。

すいません、すぐに大きくなっちゃいます。
文章だと 一足飛びに時が流れます。
便利です。

1917:Re: lime様 by しのぶもじずり on 2014/01/07 at 23:22:58 (コメント編集)

午年の年頭だというのに、馬を殺しちゃいました。
うっ、まずいかも。
いやあ、まいった。
でも、変える訳にもいかないし、すいません。

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