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赤瑪瑙奇譚 第五章――6



 イヒカは、 小屋の見えるところに隠れて、 ホジロが戻ってくるのを じっと待っていた。
 あの男が 入り口を見張っているので 近づけない。

 どのくらい待っただろう。
 道さえ判れば 自分が走ったほうが速かったかもしれない と思い始めたころ、 男が五人来た。
 うち四人は、 布に包んだ細長い物を持っていた。
 かなり長い。

 男たちは、 辺りに人気が無いのを確信しているのか、 普通の声で 話し始めた。
「上手くいったか」
 荷物を持たない男が、 見張りに聞く。
「はい、 首尾は上々です。 見事に落ちました」
「おまえは戻っていいぞ。 おまえたち、 じっくり狙って 確実にしとめろ。
 開けてしばらくは 眩しくて動けないはずだ。 隠れる所も無いから、 慌てる必要は無い」
 見張りを返し、 四人の男たちに言った。

 布を解いて出たのは 弓だった。
 それぞれが  筈に弦を掛け、 矢筒を持って 小屋に入って行く。
 イヒカは こっそりと裏手に近付き、 壁の割れ目から覗いた。

 真ん中を避けて 四人が四方に立つと、 矢を番(つが)えて 待機する。
 残る一人が、 その様子を確認して、 壁の仕掛けに 手を伸ばした。
 床が開いた。
 男たちが 一瞬戸惑う。
 そこに居るはずの カムライが 居ない。

 そのとき、 つむじ風のように突っ込んできた 二人がいた。
 覆面姿のユキアと 侍女の姿そのままの メドリである。
 ユキアが 立て続けに 二本の弦を切り、 メドリも一本切った。
 残る一人も 近すぎる相手に、 弓を捨てて 剣を抜く。

「無事なの?」
「ユン! 」
 穴の中から 答えが返った。
 広くはない小屋の中に、 剣を持つ人間が七人。
 おまけに 床の真ん中には 大きな穴が開いている。
 誰もが、 不用意には 動けない。
 一人が意を決して ユキアに 切りかかった。
 かわされてよろめいた男を、 メドリが 蹴飛ばして 穴に落とす。
 男は、待ち受けたカムライに 一撃で倒された。
「うむ、 一丁上がり」

 戦いの態勢は 少しずつ動いて、 小屋の外に 移っていく。
 二人と一緒に駆けつけていたホジロが あわてて逃げ、 裏手に隠れていた イヒカのもとに 行った。
「ホジロさんは 戦わないの?」
 手に汗を握って見ていたイヒカが、飛びついて言った。
「弱いから」

「じゃあ、 あれ取って。 俺 届かないから」
 小屋の外壁に 荒縄が かかっていた。
 ホジロがはずし、 二人で 所々に 結び目を作る。
 それを持って、 見つからないように 進んでいった。
 イヒカは 布に包まれた大鍋を被っている。
「いいな、 それ貸してよ」
 ホジロが大鍋を欲しがったが、
「やだ」
 にべもなく断られた。

 残る敵は二人。 強そうなのが残っている。
 イヒカたちは、 見つからずに中に入ると、 縄を柱に結び、 穴に投げ入れた。
 倒れた敵が一人 転がっているので、 びくびくものだ。
 カムライが 縄を伝って上がってきた。 外に飛び出す。

「おまえは何者だ」
 一味の大将と思しき男が、 ユキアと対峙して 吠ほえていた。
「聞いてどうするの」
「おまえの墓に 彫ってやる」
「じゃあ、 怪傑赤瑪瑙頭巾 なんて どうかしら」
 言い終わらぬうちに 跳んだユキアが、 剣を はじき飛ばした。

「うわあ、 かっこいいなあ、 怪傑赤瑪瑙頭巾。 いいよそれ」
「イヒカ、 かっこいいのは、 そこなの」

 倒れた仲間の剣を拾って、 再度攻撃しようとした男は、 あっさりカムライに 殴られて気絶した。

 それで全員やっつけたはずだったが、 小屋の中に倒れていた男が、 むくりと身を起こし、 剣を握る。
 目の先には、 カムライと、 その背中に 隠れるようにくっついている イヒカがいた。

(小僧、 邪魔だ。 まあいい、 一緒に 串刺しになれ)

 男は、力を振り絞って、剣を飛ばした。


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by まとめwoネタ速neo on 2012/06/09 at 13:21:57

 イヒカは、 小屋の見えるところに隠れて、 ホジロが戻ってくるのを じっと待っていた。 あの男が 入り口を見張っているので 近づけない。 どのくらい待っただろう。 道さえ判れ

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