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薬種狩り 十八の5

「ちっ、 僕には また見えなくなったらしい。
 天狗が見えない」
 それまで黙っていた穂田里が、 ようやく気付いて 周りを見回した。
「そういえば居ないな。
 バオバと一緒に、 ちっさいおじさんも燃えちゃったかな」

《ちっさいおじさん言うなと言っておろうがあー》
 さんざん騒ぎたてて、 やっと袋から出してもらった天狗は、
 バオバの炎上を見逃したことを残念がった。
「気付けよ」
 穂田里は そっけない。
《何やら騒がしい事には気付いておったが、 眠くてのう。
 面倒だったし》

「肝心な時に居ないよな。 当てにしてないけど。
 ちっさいし、 見えにくいし」
《だんだん態度が冷たくなってきたのう。
 初めの頃の熱い視線が 嘘のようじゃ。 倦怠期には早すぎると思うがの》

 目的の天狗苺を手に入れ、 都に帰れば任務を達成できると思えば、
 天狗のからかいなど なんのそのである。
 胸糞が悪くなるような道標をたどり、
 起点にした標まで来た時、 日が暮れた。

「ここから先は 記憶だけが頼りだ。 明るくなってからの方が良い。
 それに…… 今夜は満月だ」
 最初に夜を過ごした場所だ。
 梅の木と葛がある。
 近くで、 花芯を失った不気味草の残骸が 頭を垂れていた。

「満月なら明るいだろ。 問題があるのか? 
 まあ、 ここまでくれば 町が近いという事だ。 衣都に任せる。
 今回は残念だが、 僕の記憶は あてにしないで欲しい。 自信が無い」
 玲は 守備範囲外であることを認めた。

「大丈夫。 間違いなく案内する」
 森が暗闇に閉ざされてから どれほど経ったろうか。
 好き勝手に枝をのばした 木々の隙間をついて、
 天空から 皓皓こうこうとした月明かりが射しこんだ。

 眠りかけていた穂田里が ふと眼を覚ました。
 丈の低い草むらに キラキラとしたものが見える。
 一気に 眠気が吹っ飛んだ。



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