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薬種狩り 十八の3

 小太刀を外そうと引っ張りながら、 もう一度 大声で衣都を呼んだ。
 衣都は、 今度は 松明に火を付けようとしていた。

 別の枝が 穂田里の腰に伸びてきていた。
 引き離されたら 更に窮地に陥る。
 玲を助ける事が出来なくなる。
 中途半端に食い込んだ小太刀を一旦諦めて 手放し、
 穂田里は位置を替えて 玲を捕まえている枝にしがみついた。

 その時、 ズサッ、
 小太刀の隣に 衣都の山刀が飛んできて刺さった。
 つかむと同時に 斬り付けた。
 手ごたえがあった。
 樹液を吹き飛ばして 枝が切り離されてゆく。

 バオバの根元から 明るい光が立ち上り始めた。
 根元から 炎が上がっていた。
 少しでもバオバの動きを鈍らせようとして、
 衣都が 油の実と松明を投げつけたのだ。

 動いている枝と 動いている穂田里。
 どちらかを止めなくては、 思い通りの場所に山刀を投げる自信が無かった。
 失敗はできない。
 「動くな」と叫んだが、 わめき散らす穂田里の耳には届かなかった。
 苦肉の策だ。

 生木は 普通燃えにくい。
 それなのに 尋常ではなく燃えていた。
 しかも、
 山刀で切り付けた傷から 飛び散った樹液が 火のそばに落ちると、
 たちまち炎と化してほとばしる。
 人と獣を食らったバオバの樹液は、 油分をたっぷりと含んでいるのだ。
 みるみるうちに 火の勢いが広がって行く。
 枝の動きは止まったが、 代わりに 炎に巻かれるのも時間の問題だ。

 そんな中で、 穂田里は 冷静に一本一本枝を切り落としてゆく。
 最後に残った枝を切ると同時に、 二人は地面に転がり落ちた。
 玲に絡んだ枝に足を掛けて引きはがし、
「玲、 走れ!  森だ」 叫ぶ。

 穂田里は、 玲が落とした袋と自分の籠を引っ掴んで 後を追った。
 追ってくる枝があれば、 山刀で避けようと考えていたが、
 すでに動きを止めたバオバは 襲ってはこない。
 振り向けば、
 根元から上がった炎は 勢いを増しながら、 高い梢までも包み込もうとしていた。
 辺り一面が昼間のように明るい。

「燃えすぎだろ。
 危なく僕たちまで黒焦げになるところだ」
 怒る玲に 言い訳もできず、
 手を下した衣都自身が 呆然として炎を眺めた。
「ごめん」

 予想外の燃え方だ。
 いくらも経たないうちに、
 天を突き破らんばかりの勢いになった炎の色で、 空が真っ赤に染まった。




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コメント
1810: by lime on 2013/12/04 at 08:15:19 (コメント編集)

ここあたりは、映像化したらとっても迫力ありそうですね。
やっぱり、一番活躍するのがいっちゃんだってとこが、かっこいい。
諸悪の根源は、この木だったのですね。
(焼けたら、なんか臭そう・・)

1811:Re: lime様 by しのぶもじずり on 2013/12/04 at 10:50:51 (コメント編集)

いっちゃんがカッコ良く見えましたでしょうか。
それなら良かった。

確かに燃えたら臭そう(笑)
さらっとした説明になりましたが、
『死者の森』の謎が解けたと思って頂ければ、成功かな?
ミステリーを書いているlimeさんから見たら、もの足りなかったりして。

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