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薬種狩り 十八の2

 玲は待った。

 穂田里は 無駄口が少なくなった。
 衣都は表情が出て、 言葉数が少しだけ増えた。
 大きな変化ではないが、 変わったと言えなくもない。
 しかし、 玲は 全く変わっていない事に自信があった。

 何も起こらなかった。

 特に 消える様子もない。
 続いた穂田里も消えずにいる。
 振り向けば、 衣都は まだ森の中、
 油の実に鼻を付けて、 興味深そうに匂いを嗅いでいるが、
 特に異常は無さそうだ。

 玲は ほっと肩の力を抜いて、 巨木に歩み寄った。
 絡み合った枝が ぞわりとうごめいたように見えた。
 次の瞬間、
 上から垂れ下がっていた枝に まきつかれた。

 驚いて外そうと暴れたが、 男の腕くらい太さのある枝は びくともしない。
 天狗苺を入れた袋が 籠から飛び出して落ちるが、
 枝は 玲を捕まえたまま、 ゆるやかに上がって行く。
「わっ、 何だこれは。 穂田里 助けろ!」

 言い終わらないうちに 手槍が枝に突き刺さった。
 刺した所から 黄色味がかった樹液が とろうりと滲み出すが、
 動きは止まらない。
 玲を離す様子もない。

 穂田里は むきになって突き刺すが、
 樹液が出るばかりで 痛がるそぶりもなく、 玲をつかんで上がってゆく。
 何しろ木だ。
 痛いとは思えない。

 荷物と手槍を捨てて、 離れて行こうとする枝に 跳び付いた。
 槍で木を切ろうとするのは間違っている と遅まきながら気づいた穂田里は、
 玲の腰から 小太刀を抜いて切り付けた。
 が、 浅い傷が付いただけだ。
「切れ味が悪すぎる。 刃が付いているのか?」
「使う事になるとは思わなかった。 それを当てにはするな。
 それより 早く助けろ。 こいつが犯人だ」

 人を喰らったのは 森ではなく、 バオバの木だ。
 馬の尻尾に見えていた物は、 近くで見ると 人間の髪だった。
 中には 獣の尻尾らしいものも混ざっている。

 森を出ようとすれば、 十中八九 格好の目印になるバオバを目指す。
 そこは 確実に森の外なのだ。
 無事に戻った人たちは、 人格が変わったから助かった訳ではない。
 人格が変わるほどの衝撃に、 冷静な判断が出来なかっただけなのだ。
 結果、 喰われずに済んだ。

 穂田里は 諦めずに小太刀を振るうが、
 自分に巻きつこうとする枝を追い払うだけで精いっぱいで、
 玲を救い出すまでには なかなかいかない。
 すでに 玲には何本もの枝が絡みついている。
 力いっぱい振り下ろしたら、 小太刀は枝に食い込んで抜けなくなった。
 使い物にならない。
 穂田里は舌打ちした。

「おーい、 いっちゃーん」
 叫びながら 居場所を探せば、
 衣都は せっせと油の実を摘んでいる最中だった。
「くそっ、 何してる。 いっちゃん、 山刀を貸せー」
 そうしている間にも 枝は動き続けて、 だんだん地面から遠ざかって行く。



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