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薬種狩り 十八の1

 穂田里は籠を引き寄せ、
 中に入っている布袋に 無造作に 天狗苺を放り入れると、 二人に近寄った。
「早く森を出よう」

「間もなく日が暮れる。 ここで夜を明かした方が良い」
 衣都の言うとおり、 空が夕暮れ色に染まり出していた。

「僕も、 この理不尽な森からは 一刻も早く出たい」
 それまでは 衣都の案内にまかせていた二人が、
 異議を差し挟み、 いささかもめた。

 穂田里の袋は開けっぱなしで、 天狗苺が はみ出している。
 必ず袋に入れろ という衣都の注意を忘れているのか、 見向きもしない。
 そこに ひょいと天狗が跳び下りた。
《やれやれ、 大雑把な奴だ》
 袋に入り、 はみ出しているのを引っ張り入れようとして 体勢を崩し、
 天狗苺に絡まった。
 もがけばもがくほど こんがらがって、 深みにはまる。
 すっかり埋まってしまった。

「分かった」
 急いで森を出ることに話が決まり、
 衣都は 山刀を振るって、 渋々松明たいまつをこしらえた。

「よし、 さっさと出発するぞ」
 穂田里も 慌てたように袋の口を縛り、 籠を背負って立ちあがった。
 袋に閉じ込められた天狗は、 助けを呼ぼうとして思いとどまった。
 天狗ともあろうものが、 ちと情けない。
 かといって 袋を破る訳にはいかない。
 町に戻るまで このままでも良いかと考えた。
 歩き始めた穂田里の揺れ具合が 気持ちいい。
 天狗は ぐっすりと眠ってしまった。

 見上げれば、
 ところどころに 馬の尻尾みたいな塊をぶら下げたバオバの巨木が、
 のしかかるかのように 聳え立っている。
 そこは ぎりぎり森の外だ。
 気乗りがしない様子で、 ちょっとだけ顔をしかめた衣都に続き、
 巨木を目印に進む。
 はぜの木に近く、 見た事も無い木があった。
 指の先ほどの実がなっている。
 衣都が 物珍しそうに足を止めて見た。

「おお、 油の木だ。 南の島に生えると資料にあった。
 こんな所で本物を見るとはな。 節操が無さ過ぎる森だ」
「油の木?」
「油分が多い実は、 そのままで燃えるらしい」
 興味を引かれた衣都は、
 行きがけの駄賃とばかりに 立ち止って実を摘んだ。
 玲は呆れたように、
 穂田里は笑いながら、
 衣都を追い越した。

 と、 不意に空気が変わった。
 森の結界を越えたのだ。
 目の前に 巨大なバオバがある。

 遠目では 太い幹に見えていたが、
 人間の腕や脚ほどの太さのものが絡み合って、
 一本の太い幹のように見えているのが判る。
 ついに 『死者の森』を出たのだ。



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