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薬種狩り 十七の6

 リーン、 右から 鈴の音が聞こえる。
 リーン リーン、 左から 鈴の音が届く。
 リーン リーン 足元から湧いてくる。
 リーン リーン リーン、 天から 鈴の音が降り注ぐ。

「迷子鈴だ。
 しかし、 何処だ。 森じゅうから響いてくる」
 しかめっ面で文句を言ってみたが、 状況は変わらない。

 戻って来た衣都も その音を聞いた。
 前と思えば 後ろ、
 後ろかと思えば 前から聞こえる鈴の音は、
 耳を澄ませば澄ますほど たどれない。
 耳に手を当てても、 体の向きを変えても、
 役に立たないばかりか 混乱が増すばかりだ。

 同じように きょろきょろしている玲と天狗に、 衣都が駆け寄った。
「あれは迷子鈴だ。
 穂田里様の鈴らしいが、 どっちから聞こえてくるのか判断できない。
 天狗様にも分からないのか」
《あっ、 そっか。 いかんいかん。 ちっとばかし待て。 精神統一する》

 時すでに遅し。
 音が止んだ。
《あわわ、 何故止める。 根性を入れて鈴を振らんかい》
 叱咤激励も 穂田里には届かない。
 しばらく待ったが 無駄だった。
 うんともすんとも音がしない。

 衣都が、 懐から 赤い紐の付いた鈴を取り出した。
 玲が、 懐から 青い紐の付いた鈴を取り出した。

 互いに気にすることなく 各々勝手に、
 そして、 ほぼ同時に 鈴を振った。
 二つの鈴の音は より合わされ、 絡み合い、
 一筋の澄んだ音になった。

 月見草を撫で、
 山百合をかすめ、
 枸杞くこの枝を打ち、
 散り敷いた金木犀きんもくせいの花を越え、
 けやきをくぐり、 森にしみとおる。

 柘榴ざくろの枝が 揺れた。
 石楠花しゃくなげが 揺れた。
 数珠玉を分け、 颯爽と穂田里が登場した。
 途中で見つけた天狗苺をひと束つかんで 息を荒げている。

「待たせたな」




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