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薬種狩り 十六の3

 しかし、 夜が明けてみると、
 葛の蔓は きれいさっぱり消滅していた。

 大事な道標みちしるべだ。
 簡単に取れるようでは意味が無いから、 しっかりと結びつけておいた。
 それなのに どこにも無い。
 下の地面に落ちてもいなければ、 周囲の木にも引っかかってはいない。
 いつもの印が 役に立たないという事だ。

 いったい どうして無くなったのだろう。
 道に迷わせようとする何者かが 取り去ったのだろうか と考えて、
 ふと 足元を見た衣都は、
 穂田里が言った 『大事な事』が解ったような気がした。
 もう一度 周囲の地面を改めた。
 それしか考えられない。
 と同時に 困った事になったと思った。
 その推論が当たっているとしたら 大変だ。
 天狗苺を見つけても、 持って帰れないかもしれない。
 どうしても真相を確かめなくてはならなかった。

 熊笹を一本引きちぎり、 山刀を留めてある紐に差した。
 こっそりと 穂田里の背負った籠には 柿の小枝を、
 玲の籠には ほおの葉を投げ入れ、
 嫁菜よめな石蕗つわぶきと 雪の下も摘んだ。

 それから三日後のことだった。
 衣都が 葉鶏頭を払ったら、 そこで『葉影小人草』と目が合った。
 まあるい小さな草が 逃げて行った先を見て、
「あった!」
 衣都が いつになく 嬉しそうな声で叫んだ。

 聞いて駆け寄った 穂田里と玲は、 歓声を上げた。
 ついに見つけた。
 しかし 衣都は真顔に戻って、 これでは駄目だと呟いた。
 見つけたのは 紛れもなく天狗苺だ。
 だが、 量が決定的に足りない。
 そこに在ったものだけでは、 五、六人分にしかならない。
 都を出発した時点で、 すでに五人が罹患していた。
 封鎖された都には、 もっと大勢の患者が苦しんでいるはずだった。
 全然足りない。

「あるのは分かった。
 これしかないという事は無いだろう。
 任務続行だ。 どんどん見つけるぞ」
 穂田里は 威勢よく そこいらの茂みに突進した。
 衣都は 布袋から雪の下の葉を取り出して 捨て、 丁寧に天狗苺を収めた。



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