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赤瑪瑙奇譚 第五章――3



 回廊に たたずむ男。
 誰だか分からないが、 あまり見ていては悪い気がして、
 ユキアは お茶会をしていた部屋に戻った。

 けげんな顔をしている一同のなかから、 隅に控えていたウガヤが出て、
「殿下は どうして居ないのですか」
 と聞いてきた。
「急用だというお手紙が届いて、 出て行かれました」

「あっ」
 という声が、 入り口の 開いた扉の前から聞こえた。
 先ほどまでは いなかった第三王子ツクヨリだった。

「何か ご存知なのですね」
 ウガヤが、 振り返って 問い詰める形になった。
「えっ、 いや何でも ……な」
 ユキアの顔を見て、 ごまかそうと口ごもったが、 部屋中の視線が ツクヨリに集まっていた。
 観念したように 続ける。
「先ほど門前に、 覆面をした女が 手紙を置いていったと、 召使のものが言っていましたので、
 それかな と思ったのです」

「覆面の女とは、 もしや……」
 ウガヤが カリバネと 顔を見合わせた。
 ユンだと考えているのだろうが、 それはありえない。
 本人がここに居るのだ。

 ユキアにも 事の次第が 推察できた。 偽物の 『ユン』 におびき出されたのだ。
 開いた扉から、 控えの間にいたメドリも 一部始終を聞いていた。
 ユキアの目配せで 出て行く。

「ユキア……様、 不躾な兄を お許しください」
 何故か ツクヨリが謝った。
 優しげな顔が 悲しそうに曇る。

「いいえ、 殿下はお忙しくていらっしゃるのでしょ。 仕方がありません」
 ユキアは答えながら、 第三王子は いつも どこか悲しそうに見える と思った。

「でも、 大事な席なのに、 覆面女なんかに 呼び出されるとは、 兄上は……」
「どんな事情で 覆面をしているのでしょうね。 秘密めいた仕事をしているのかしら。
 緊急事態でしたら心配ですが、 殿下は お強くていらっしゃるのでしょう」

 誰もが普通に考えそうなことを 言ってみた。
 カリバネとウガヤが ほっとしている。

 覆面女の正体は、 いったい何者なのだろう。
 誰が覆面をしていようとも、 カムライがユ ンと間違えるはずは無い という変な確信があった。
 ユキアは 帯に挟んだ赤瑪瑙を そっと抑えた。
(あっさり間違えて、 ややこしいことになったら 怒るよ)

「あの……、 兄の代わりに わたしが庭をご案内しましょう。
 密かに改良した菊花が 満開になっています」


 メドリは、 何度か見かけたことのある門番がいるのを見つけて 近寄った。
 ユキアについている侍女だと名乗ると、 門番も覚えていた。
 さりげなさを装って 覆面女のことを 聞いてみる。 明らかに ユンに似ていた。

「カムライ殿下が お出かけになられましたが、 どちらに 向かわれたのでしょうか」
「ここを お通りにはなっていません。
 あはははは、 カムライ殿下は いろんな所から お出かけになられるようでして、
 護衛の者たちも よく撒かれているみたいですよ」

 こうなると、 少しでも心当たりがあるのは、 ホジロと調査団の泊まっている宿しかない。
 無駄足かもしれないが、 一応 確かめることにした。

 宿には 案の定、 調査団員もホジロも 無論 カムライもいなかった。
 諦めて 迎賓館に戻ることにした。
 カムライが出かけたのなら、 ユキアも帰ったはずだ。

 迎賓館の前に着いたとき、 ホジロが メドリを見つけて 駆け寄ってきた。
「ユンは?  ユンに知らせて!」


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by まとめwoネタ速neo on 2012/06/07 at 23:08:28

 回廊に たたずむ男。 誰だか分からないが、 あまり見ていては悪い気がして、 ユキアは お茶会をしていた部屋に戻った。 けげんな顔をしている一同のなかから、 隅に控えていたウ

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