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薬種狩り 十五の4

 番頭から聞きだした森番の小屋は、 村はずれにある 丘の頂上だという。
 ふらふらと道を外れそうになる 穂田里の進行方向を 修正しながら登った。

「丘というには高すぎる。 これでは山だ」
 文句を言いながら登るのは、 もちろん玲だ。
 頭脳派の自分が 何故こんな羽目になったのか と腹立たしいが、
 ここまで来たからには、 天狗苺を諦めるつもりは無かった。
 危険な事は嫌いだが、 一度手を付けたことを途中で放り出すのは もっと嫌いだ。
 ここまできたら、 どこまでも突き進む気だった。


 頂上には 粗末な小屋があった。
 その前で ずんくりむっくりした男が ぼんやりと立っている。
 あれが森番だろう。
 三人が近づいても、 じっと立っているだけで 振り向きもしない。

 森番と同じ場所に立ってみれば、 眼下に『死者の森』が見渡せた。
 ちらほらと紅葉した木々が混じり、 見た目は 賑やかな森にしか見えない。

《ほほう、 これが『死者の森』か。
 この国も広い。 こんな不思議な場所があったとは。
 中心部から まるで煮え立つ如くに 霊気が湧きあがっておる》
「良かった」
 衣都の口から 安堵がこぼれた。

《しかし 不思議な事よのう。
 あれだけ湧きたっておれば、 周囲にも溢れてきそうなものじゃが、
 全くその気配が無い。 むむっ》
 衣都が、 もの問いたげな視線で 天狗に先を促すと、
 しばらく眺めていた天狗が 森の一点をぴしりと指差した。
《あそこに大岩がある。
 あっちには 背の高い柱のような岩が、
 あの辺は 木が生い茂って見えにくいが やはり岩がある。
 向こうにある ひときわでかい木の手前にも 在るな》
 天狗は、 森の中心を囲むように点在する岩を指摘した。
「……」
「……」

 衣都と穂田里が 黙って見ていると、
 森番が 大木を指差して 気の抜けた声を出した。
「バオバの木なんだな。 ものすごーく大きいんだな」
 八福からは 草の匂いがした。
 汗の臭いもしなければ、 人間臭い感じが全然しない。
 丘に転がった西瓜みたいな男だ。

「聞いた事が無い。 バオバの木など初耳だ。 あれが何だというのだ。
 ところどころに 馬の尻尾のようなものが垂れ下がっているようだが、
 馬尾葉とでも書くのだろうか。 どうだ、 森番」
 衣都の様子から、 天狗苺を見つけられる可能性が高い と推測したものの、
 いつもは うるさいくらいな穂田里が おとなしい。
 よく分からないが、 大木に問題があるのだろうか と玲が問いかけた。

「じ、 字は考えてないのだな。
 なんとなく バオバの木なんだな。 そんな気がするのだな。
 それでいーいのだ。 バオバなーのだ」
 あいまいな口調で、 ゆっくりと バオバを繰り返す。

 宿屋の番頭が何を言いたかったのか 分かった。
 八福は 森を眺めている他には 興味が無いと思われる。



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