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薬種狩り 十五の3

「森番が居るのか。 それなら話が早い。
 その小屋に案内しろ」

 さっそく立ち上がろうとした穂田里だったが、
 それを押しとどめるように 番頭は手をひらひらさせる。
「いえ、 なんと申しましょうか、 それが ちっとも早くございませんのでして。
 八福の親が他界した時に、 暮らしの道を考えてやらねばならず……」
「森番の生い立ちは いらない。 番頭さんより話が遅いのか」

 穂田里に突っ込まれて 話の継ぎ穂を失った番頭に、 玲が質問した。
「戻って来た人間が 別人のようだったと言ったな。
 どのように変わったのか、 もう少し詳しく説明できるか」
 口を開けたまま止まっていた番頭が 再起動した。

「奥方様は しとやかで女らしく、
 若君をもうけられてからも 乙女の如く楚々そそとした方でございました。
 ああ、 それなのに なんという事でございましょう。
 まるで 山姥やまんばもかくやとばかりに荒々しく、
 たくましいご様子になり果ててしまわれました。
 お声まで ドスが利いてしまわれて、 よよよ……」

 三人は 目を丸くした。
「逞しくなっちゃったのか」

「また、 若君は 幼いながらも品が良く、
 おっとりとして 可愛らしい若君でございましたのに、
 すっかり…… 悪ガキになってしまわれました。

 逆に、 肝試しに行った若者の一人は、 どうしようもない不良だったそうでございますが、
 森から出てきたときには、 すっかり更生して 好青年になっていました。
 もう一人は、 肝試しというよりは、 怪しい噂の真相を確かめて、
 無駄な騒ぎを鎮めようとしてくださった 三人の武官の内のお一人でした。
 腕に覚えもあり、 たいそう胆の据わった方だったそうでございますが、
 泣き虫の甘えん坊になって 戻ってこられたのでございます。
 すぐに仲間とはぐれてしまったと、
 めそめそしながら 言い訳めいた述懐をなさったそうでございます。
 つらつら思いますに、
 人格が変わらなければ、 無事に戻って来られないのではありますまいか」

 三人は すぐには反応できなかった。
 想像していたのとは違っている。
 魂の抜け殻になったとか、 一気に 爺婆になったとか 色々想像していたのに、
 山姥と悪ガキ、 好青年に 甘えん坊の泣き虫と言われても
 ……困る。

「なるほど別人だ」
 さすがに、 玲も気の利いた事が言えなかった。



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コメント
1748: by lime on 2013/11/09 at 09:21:01 (コメント編集)

この現象はおもしろいですね!
なんか、いろいろ想像してしまいます。
もしこの3人がはいったとして、正反対になっちゃったら、どんなふうになるのかな。
・・・物語が、成り立たなりますかね。

1749:Re: lime様 by しのぶもじずり on 2013/11/09 at 10:31:02 (コメント編集)

主要登場人物の三人が、そろってキャラ崩壊?
大ピンチです。四面楚歌です。絶体絶命です(笑)

いよいよ大詰めに入りました。
年内には終われる予定です。

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