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薬種狩り 十四の5

「天狗が何か言ったのか。 通訳しろ」 と 玲がうるさく騒ぐが、
 唇を尖らせて考え込んでいる衣都が 答えないから、
 仕方なく 穂田里が説明していた。
 だから 二人は、 衣都の小さな呟きを聞き逃した。

 やっと事情を飲み込んだ玲が、 衣都に向きなおる。
「衣都、 一人で勝手な事をするな。
 穂田里の言うとおりだ。 君が居なければ 役目を果たせない。
 何でも僕たちに相談しろ。
 衣都にとって大切な事なら、 僕らが協力する。
 君は 駄狗にとって大事な御守だったのだろう? 
 僕らにとっても、 おんなじだ。 大切な大切な 御守なのだ」
 ゆっくりと三つ数えるほどの間を置いて、
 衣都が こくりと頷いた。


 翌朝、 三人は 村を出た。
 あれだけ大歓迎をされたにしては、 見送りが少ない。
 二日酔いで動けないのだろう。
 村長の他は 女衆が多い。
 海太郎は居ないが、 海太郎の母は 見送りに出ていた。

「玲さん、 行ってしまうのね。
 残念だわあ。 家族になりたかったのに」
 玲は 苦虫をかみつぶしたような顔だが、
 海太郎の母を相手に 余計な反論をしては、 何か よくない事になりそうな 嫌な予感がして、
 さらりと流す事にした。

「母者、 世話になった」
「あれまあ、 他人行儀な。 お亀って呼んでよ」
「げっ! (亀…… 亀女………… どろどろ…… の亀女)」
 玲が 今にも吐きそうな様子になった。
 全速力で飛び出す。
 穂田里と衣都は 訳が解らないまま、 慌てて後を追った。

「玲って、 見かけによらず面倒見が良いんだな。
 さかな村も これで安心だ。 隠忍の里にも良いきっかけになったろう」
 並びかけた穂田里が 楽しそうに言った。
「ふん」
 穂田里の称賛も軽く流す。
 『我が穴掘り人生全六巻』 に感動してしまったあげくの 勢いだったとは、
 恥ずかしくて 口にできない。

 のちの世で 『鬼の洞窟』と呼ばれ、
 村人との飲み比べに負けた鬼が、 一夜で掘り抜いた と伝えられる事になる隧道を、
 三人は 一目散で駆け抜けた。

 『死者の森』に 天狗苺がある事を願いながら……。




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