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薬種狩り 十四の4

 三人で橋を引き上げ、 衣都は 杭から赤い小袋を取り戻した。
 村では、 宴会が最高潮に達しているようだった。
 柿の木の根元に転がる丸太に 腰を下ろし、
 促されるままに 衣都はポツリポツリと話をした。

「草楽堂が 父さんの弔いをしてくれた。
 でも、 覚えていない。
 俺の弔いをするつもりだった。
 父さんの夢は 『東原の悪魔』 を仕留めることだった。
 ここで、 あいつを見つけた」
 唇を尖らせて、 訥々とつとつと衣都は語った。

 駄狗は 信じる道を突っ走った。
 たとえ 相手が朝廷でも ひるむことなく突っ走って 死んだ。
 そうして、 『いつかアレを仕留める』
 と 口癖のように言い続けた夢が、 果されること無く残った。

「さっきの獣が 東原の悪魔なのか。
 古い文献で 一度だけ見た事がある。 実在していたとは驚きだ」
 玲が目を見張った。
 東原の悪魔は 狼に似ているが、 その凶暴さゆえに 恐ろしい名前で呼ばれている獣だ。
 きもは 不老不死の秘薬と伝えられ、
 脳味噌を食らえば 超人的な戦闘能力を得る という怪しげな言い伝えを持っていた。
 長い間 姿を見たものが居なかった為、
 今では 実在しない伝説の生き物だ と思われている。
 本気で探していた人間がいたとは……。

「水臭いなあ。 言ってくれれば 俺と玲が手伝ったのに」
 獣に遭遇したことで、 穂田里の酔いはすっかり冷めていた。

「玲様と穂田里様は、 帝の勅使だ」
「それがどうした。 いっちゃんは その案内人だ。
 いっちゃんがいなければ 無事に役目を果たせない」

「……」
 黙り込んでしまった衣都の肩先で、
 しばらく様子を見ていた天狗が、 不意に衣都の耳を引っ張った。
《残念なお知らせがある。
 名前こそ大層だが、 あいつは ただの獣だ。
 胆には そこそこ滋養があるが、 他の獣と比べても たいした違いは無い。
 不老不死の秘薬なんて とんでもない。
 無責任なデマか、 もしくは勘違いじゃろう》

 衣都は そっと溜息をついた。
 赤い小袋には 魔除けの御守が入っている。
 橋を下ろしている間に、 村に入り込まないように と置いたが、
 意味が無かったという事だ。

「父さんが知ったら がっかりする」
《あの世に行っちまった駄狗には 内緒にしておけ。
 親に言えない秘密が出来れば、 子どもも一人前じゃ》



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