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赤瑪瑙奇譚 第五章――2

 お茶会も終わろうとする頃、カリバネが、口を開いた。

「カムライ、庭の紅葉が色づいてきたようだ。ユキア姫を案内してはどうだ」
 見合いの定番だ。

 カムライとしても、二人きりで話が出来るいい機会ではある。
 昨日までなら、どうやって断ろうかと頭を悩ませているところだが、
 今はそれどころではなく混乱していた。
 混乱したまま立ち上がって庭に出る。

 庭の木立は、ところどころ紅葉し、撫子、桔梗も咲いていた。
 何処からか菊の香りも流れてくる。
 風情は満点だが、カムライは何を言っていいのか分からぬままに立ち止まって、振り向いた。

「わたしと結婚するのは、嫌ではないのですか」
 言ってしまって驚いた。
 こんなことを言ってはまずいような気がしたが、止まらない。
「国と国とで勝手に決められて、悲しくは無いのですか」

「いいえ」
 真正面から答えられてしまった。
 抜き差しならなくなっていくようで焦る。

「カリバネ陛下が、花火になって欲しいとおっしゃったと伺いましたが、
 正直に言うと意味が分かりませんでした。
 この国に来ておぼろげながら分かってきたような気もいたします。
 戦で受けた深い傷が癒えることが無いとしても、
 もう見なくても良い悪夢からは、目を覚まして欲しいと思われたのでしょうね。
 大きな花火になりたいと思います」

 真直ぐに向けられた瞳と可愛らしい唇が、ふいにふわりと解けるように微笑んだ。
「それに、お相手がカムライ殿下ですから」

 天に昇ったのか地に落ちたのか、分からなくなった瞬間だった。
 それにこの声。
 こんなに近くでちゃんと聞いたのは初めてなのに、
 どこかで聞いたことがあるような気がするのは何故だろう。
 視線を向ける先に困って、ぐるりと庭を見回した。

 回廊に手紙を持った召使が、カムライを見ていた。
「何か」
「門前に、急ぎの手紙を置いていった者がありまして、お届けにあがりました」

 その場を救われたような気がして、受け取ってユキアを見ると、
 どうぞというように頷いたので、何気なく開いた。

 読んで、眉を顰(ひそ)める。なにかおかしい。
 しかし、もし本当なら、放って置くと、きっと後悔するだろう。
「申し訳ありません。急用が出来ました」

 去っていくカムライを見ながら、ユキアはため息をついた。
 告白しそこなった。
 自分はユンだと言うには、意外に勇気が必要だ。
 どのように言ったところで驚くだろう。
 面倒だから止めちゃえ。
 落ち着くまでユンの姿で会わなければいい。そう思ってしまったユキアだった。

 特に凝った造りではないが、手入れの行き届いた良い庭だ。
 独りになって改めて眺めると、庭をぐるりと囲んで回廊がある。
 長い戦いのせいなのかもしれないが、思いの他簡素なコクウの城を、ユキアは好ましく思った。

 回廊の端に人影がある。
 ユキアに気づいてはいないようだ。
 というより、回りに全く関心が無いようにも見える。
 誰だろう。
 召使などではないことは着ているもので分かる。

 戦国の武将を思わせる大きくて引き締まった身体、意志の強さを表すようながっしりとした顎、
 だが、それらに反して双眸だけがあまりに弱弱しい。
 その人も辛い想いを抱えているのだろう。
 長い後れ毛がふわりと揺れた。

 その時まだユキアは知らなかったが、初めて垣間見た第二王子ミノセの姿だった。

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by まとめwoネタ速neo on 2012/06/07 at 11:16:55

 お茶会も終わろうとする頃、カリバネが、口を開いた。「カムライ、庭の紅葉が色づいてきたようだ。ユキア姫を案内してはどうだ」 見合いの定番だ。 カムライとしても、二人きり...

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コメント
124: by lime on 2012/06/06 at 09:04:23 (コメント編集)

また、新しい、謎めいた登場人物が・・・。
ミノセというのは、前に名が出てきましたね。
どんな存在になるのか、楽しみです。

そしてユキアは、いつ、カムライに打ち明けるんでしょう・・・。
気になります。
カムライの反応も。
「しましょう!すぐ結婚しましょう!」とか、・・・言わないかな^^;

126:Re: lime様 by しのぶもじずり on 2012/06/06 at 17:00:07 (コメント編集)

ちょっと人数が多すぎますかねえ。

書いてる本人はさすがに覚えているのですが、読んで下さる方が、途中で忘れちゃわないか心配になっちゃいます。
人物紹介ページを作っておいてよかった。

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