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薬種狩り 十四の3

 衣都は 視界の中に、 二つの光点を捉えた。
 来た。
 光は 時に方向を変えながらも 徐々に近づいてくる。

 山刀の握りを確かめ、 衣都は待った。
 ぎりぎりまで待ち、 不意を襲って 喉笛を掻き切る。
 勝機は、 おそらく そこにしかない。

 風の無い夜だ。
 じっと動かなければ 、気付かれずに待ち伏せができる。
 目当ての獲物は 確実に近づいてきていた。
 あと少し。
 間合いを測って 息を詰める。


 と、 衣都の後ろから 小さなつむじ風が吹き、
 獲物の鼻先をかすめた。
 衣都の渾身こんしんの一撃は かわされた。
 身をひるがえした獣は、 すぐさま 体勢を立て直し、 身構えて牙をむいた。
 形勢は逆転した。
 衣都は 狩る側から 狩られる餌になった。

 獣は 余裕で衣都えさを値踏みする。
 おとなしく食われてくれる獲物ではない と獣も気付いていた。
 見たことも無い大きな牙を持っているが、 久しぶりの美味そうな獲物だ。
 見逃す手はない。
 緑色に光る眼が 期待に輝いた。

 獣の体が 一瞬沈む。
 跳躍の前兆だ。
 山刀が閃く。
 つむじ風が 走り抜けた。
 リン と澄んだ音が響いた。
 動かないはずの迷子鈴だ。

 驚いた獣は 大きく後ろに跳びのく。
 荒々しい足音と同時に 手槍が飛んできて、 獣の目前に突き刺さった。
 新手あらての出現に、 獣は またたく間に姿を消した。


「いっちゃん、 無事か」
 穂田里の問いかけに、 衣都は 無言のまま動かない。
「衣都、 何をしていた。 いったい何を考えている」
 玲が 青筋を立てていた。
「…… いろいろ」

「衣都、 一言で片づけるのはやめろ。
 きちんと説明しなくては解らん。 ゆっくりで良い」
「父さんが死んだ」
「そこからか」

《すまんなあ。
 わしが うっかり邪魔しなければ、 衣都は 奴を仕留められるところだったのに。
 悪い悪い。 衣都の匂いを 奴に気付かせてしまったわい》
 つむじ風に乗って、 衣都の肩に天狗が帰ってきた。

「天ちゃん!  何処に行ってたんだ?」
《ちょっと野暮用。
 それより ここは奴の縄張りだ。 場所を変えんか》



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