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薬種狩り 十四の2

 宴会は 派手に盛り上がった。
 すっかり救世主に祭り上げられた米斗亥は、 生まれて初めて口にする海産物に魅せられ、
 隠忍の里とは風味の異なった酒に酔いしれた。
 とげとげしさは影をひそめ、 どんどん救世主らしい鷹揚な態度になってゆく。
 今にも「よきにはからえ」とか言っちゃいそうだ。

「大丈夫そうだな」
 様子を見ていた玲が言った。
 喧嘩っ早い男と知っていながら、 米斗亥を呼びに行かせたのは玲だ。
 もめごとが起きれば、 対処しなくてはならない と考えていたが、
 その心配は無さそうだ。
 これで出発できる。
 見回せば、 穂田里は宴会の渦のただなかで 酔って浮かれているが、
 衣都の姿が見えない。

「衣都は何処だ」
 穂田里を引っ張り出して 問えば、
「あれっ、 居ないなあ」 と 我に返って言う。
「しょんべんにでも行ったんじゃないのか。
 うわっ!  いかん いかん。
 いっちゃんは 女の子らった。
 女の子は ふわふわでやーらかい。 しょんべんなんかしない。
 何処に行ったんらろう。 心配だ」
「……穂田里、 それ、 本気で言っているのか」
「もちろんでごじゃる」

 玲は 小さく肩をすくめると、
 通りすがりの下男を捕まえて、 衣都を見なかったかと問いただした。
「そういえば、
 さっき 追加の酒を運んできた鶴吉が、 橋の方へ行くのを見た とか言ってましたが」
「いかんれはないか。
 こんな夜遅くに 女の子が一人で出歩いては危ないのら。
 玲君、 探しに行こう」
 穂田里が よろりと立ちあがった。

「どうせ 天狗が一緒だろ。 一人じゃない」
「天狗は居ないぞ。 だいぶ前に 居なくなったのら」


 穂田里は手槍を 、玲も一応 小太刀を手にして村長の家を出た。
 それぞれに 灯を入れた龕灯がんとうも持った。
 外はすっかり暗い。
 村には 穴掘りに使っていた龕灯が いくらでもあった。

 二人が村の入り口に着くと、 橋が下りている。
「まさか 一人で外に行っちゃったんじゃないらろな。 いよいよ危ないぞ」
 足元をふらつかせながら 周りを見回して呟く穂田里の後ろで、
 玲は 杭に掛かる赤い小袋を見つけた。

「衣都の物だ。 何故 こんな所にある。
 やはり 一人で出て行ったのだろうか」
「探してみるろ」
 橋を渡ると、
 遠い波の音がかぶさって、 村の喧騒が 嘘のように静かに感じられた。
 二つの明かりで そこいらを照らしてみるが、 衣都の姿は無い。

「穂田里、 たぶんこっちだ」
 玲が向けた明かりに照らされて、
 丁度 目の高さにある枝に 短い蔦が結ばれているのが見えた。
「ヘンな木だ。 結ばってれら」

 方向を見失いやすそうな場所で、
 衣都が目印にしている やり方だった。
「君も探したまえ。 おそらく、 これをたどれば 衣都が居る」



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