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薬種狩り 十三の6

 村長は青くなった。
 海太郎は いったい何をした。
 心臓が痛い。

「衣都、 米斗亥を呼んで来てくれ。
 自慢の発明を 心ゆくまで使わせてやると言えば、 喜んで来る」
 村長の気持ちなどそっちのけにして、 玲は意外な事を言いだした。

「分かった」 と、 衣都。
「なるほど、 そういうことか。 じゃあひとっ走り行ってくるわ」
 穂田里も頷いた。
「頼む」
「おい、 頼むって、 玲は行かないのか。 足がまだ痛むのか」

「否、 完治した。 あと少しで、 第六巻を読み終わるのだ。
 君こそ 怪我をしているだろう。 休んだらどうだ。
 呼びに行くだけだから、 衣都一人でも平気じゃないのか。
 迷子になったら、 かえって足手まといだし」
 天狗が とりいているはずだ。
 どうやら 小さいらしいが、 天狗は天狗。
 神通力なんかも持ち合わせているだろうから、
 衣都を守るくらいの事は出来るだろう と玲は考えた。 

「馬鹿言え。 猪や狼がいるんだぞ。 女の子に 一人で行かせられるか」
 むきになって言い返した穂田里に、 玲は眼を見開き、 小さく舌打ちまでした。
 面白いから知らんぷりをしていたのに、 とうとう気が付いてしまった。

 良く見れば 衣都が女の子だということはすぐに判る。
 明日妥流は 赤い紐の付いた迷子鈴を渡した。
 佑流は 手本を見せたが、 手を添えては教えなかった。
 みそぎの儀式では、 導師は衣都を女衆の席に着かせた。
 すぐに咬みつく米斗亥も 衣都にだけは優しい。
 最初の印象だけで勘違いをし続けていたのは、 穂田里だけだ。

 気が付いた瞬間に 穂田里がどういう態度に出るか 楽しみにしていたのに、
 見逃してしまったのは 大いに残念だった。
 きっと面白かったに違いない。
 口に出す言葉より、 穂田里は純情だ。

 穂田里は 玲の様子を気にすることなく、 得意になって続けた。
 天狗が行方不明になっている今、 衣都を守るのは自分しかいない。
「玲を探しているときに 何度か迷子になって気付いたんだが、
 俺って、 音に対する方向感覚は すこぶる良いみたいなんだ。
 迷子鈴が鳴れば、 一直線にたどり着ける。 凄いだろ」

 そもそも 迷子になるという時点で 誇れる事ではないのだが、
 よほど うれしかったのだろう。 笑顔が満開だ。

「それは良かった」 と 棒読みで答えた玲は、
 話が見えなくて 不安を抱えているしかなかった村長に向き直った。
「僕は ここで待たせてもらう。
 村の記録があれば、 残らず見ておきたい。 持ってきてくれたまえ」
 狼や猪がいるというなら、玲こそが 足手まといになるかもしれない。

 勅使様の要求なら 何でも聞くつもりでいた村長は、 もちろん すみやかに了承した。
 ひょっとして 旧い資料に村の名前が書かれているかもしれない。
 判明すれば、 きっと朝廷の記録に記載されるのだと 、喜び勇んで 村長は蔵に急いだ。



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