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薬種狩り 十三の5

 多くの村人が はしゃぎすぎて疲れ、
 あるいは 二日酔いでつぶれ、
 もしくは その両方により 日常の活動に支障をきたしても、 朝は来た。


 昼を過ぎてから やっと動きを取り戻し始めた頃、
 村長も 重い腰を上げて 勅使様たちの前に まかり出た。
 三人とも 普通に元気そうだったが、
 前日よりさらに膨れ上がった穂田里の青あざを見て、 改めて恐縮することしきりだった。

「海太郎の奴めが とんでもない事をやらかしまして、
 まことに以って 申しわけございません。
 わたくしからも 重ね重ねお詫び申し上げます」
 その上で、 村長は 村の事情を詳しく説明したのだった。

 大地震の前までは、 不便でも 他の土地に行けないこともなかった。
 村の東には 小さな入り江もあって、 潮の加減が良い時期には 船が出せた。
 南の山を越えることもできた。
 どちらも簡単ではなかったが、
 季節や天候を選び、 日数をかければ 不可能ではなかったのだ。

 しかし、 大地震が 完全に両方の道を奪ったという。
 入江は 沿岸の土地ごと沈下した。
 苦労して、 崖に海までの道を拓き、 苦心惨憺さんたんして浮橋の桟橋を作ったが、
 海上には 崩れかけの奇岩が あちこちに残り、
 海底の地形も激変したらしく、 潮の流れが 複雑で激しいものに変わっていた。

 意を決して 漕ぎ出した船は、
 あるいは 暗礁に捕まり、
 あるいは 突き出した岩に叩きつけられて、 沖に出ることができなくなっていた。
 何人もの男たちが命を落とした。

 次に、 村人たちは 大きく崩れた南の山に穴を通して、 地下に隧道ずいどうを作ろうとした。
 気の遠くなるような年月を使って掘り進め、 もう少しで貫通するはずだった。
 しかし、 硬い岩盤に 行く手を遮られてしまったのだ。
 岩盤は思いのほか大きく、 にっちもさっちもいかなくなっていた。

 北から西に連なる山並みは、
 何処を越えても 凶暴なオニの住むという土地にしか行きつけないが、
 そもそも越えられない。

 絶望的になっていたところに、
 どこを通ってきたのか 西から人が来たのだ。
 しかも オニどもを手なずけてきたという。
 新たな希望だ。
 海太郎をはじめとする 血気盛んな数人が飛びついた。
 その気持ちを解ってもらいたい と村長は訴えた。
 どうやら 「隠忍おにの一族」を 「鬼の一族」と勘違いしているらしい。
 村中が 同じ勘違いをしているのだろう。

 長い年月に渡って 掘り続けてきた隧道の行く手を塞いだ 硬い岩盤は、
 村の希望を打ち砕いたのだと、
 期待が大きかった分だけ 失望の大きさも 計り知れぬ落胆をもたらしたのだと、
 それはもう 切々と訴えたのだった。

「どうか一つ、 我らの気持ちをお汲み取り頂き、
 寛大なご処置をお願い致します」
 穂田里に向かい、 すがりつくような目で 平身低頭した。

「玲が無事に戻れば、 それで良い。
 じゃあ、 明日にでも出発するか。 ここいらに天狗苺は無いらしい」
 どこにも通じる道が無いとなれば、
 来た道を戻って、 隠忍の里から 険しい山道を降りなければならない。

「待て、 まだ何も解決していない」
 玲が 冷ややかに告げた。



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