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赤瑪瑙奇譚 第五章――1



 招かれて 城を訪れたユキアたちは、 丁寧に出迎えられた。

 マホロバのウケラ城とは違い、 装飾などは ほとんど目立たない。
 入り口正面の、 大弓を持つ銅像だけが 威容を誇っていた。
 見上げると、 案内の召使が 誇らしげに説明した。
「初代王 イワレの像 でございます。
 矢は イワレ王が実際に使ったものだ と伝えられております。
 鏃(やじり)が黒曜石でできており、 悪魔を射抜いた という伝説がありますので、
 城と国の魔を祓(はら)う意味で ここに置かれています」

 銅像の腰の辺りに添えられた右手に、 矢が 小さな金具で支えられている。
 それ以外は、 見事なほどに 殺風景だった。 他に 自慢するものが無いのだろう。
 奥まった部屋に案内されるまでの廊下にも、 甲冑や武具などが いくつか壁に掛けられているだけで、
 装飾といえるものが ほとんど無い。
 城自体、 手入れはされているものの、 修理をしたほうがいいような有様だった。

 お茶会は、 事情を知る者たちだけの 内々の会で、 ことさらに 少人数で行われた。
 二人が 度々会ったという事実を作るためと、 少人数のほうが、 二人も打ち解けやすいだろうという、
 王とウガヤの作戦だったが、 カムライは 相変わらずの様子だった。
 ユキアを見てはいけないもののように 振る舞い、 視線を向けようとはしなかった。
 ただ、 その内心は 大方の予想とは違うものだった。

 見てしまって、 また運命を感じたら どうしよう と思っていたのだ。
 だが、 隣に座っているだけで 最早心地いい。


 戦に明け暮れて、 国を守ることだけを考えていた日々には、 女性のことを気にする余裕も無かった。
 平和が訪れて、 気がついたら 一人前の男といっていい年頃になっていた。
 そうしたら、 立て続けにこれだ。
 次々と心奪われる女性に 巡り会う。
 展開が 速すぎるではないか。
 こんな態度が 失礼なことは カムライもよく分かっているのだが、 普通に出来ないのだ。
 頭の中が ぐちゃぐちゃだ。

 それなのに、 ユキア姫は 普通に楽しそうなのだ。
 よほど肝が据わっているのか、 あるいは鈍いのか……。
 だが、 時折、 何もかもお見通しなのじゃないか という気がするのは 何故だ。
 単なる気のせいか。 世の男たちが 妻を恐れるのは、 こういうことなのか。
 いや、 まだ妻じゃないし……、 ああっ、 今 『まだ』 とか考えた。
(ユン、 どうしよう)

 晩生(おくて)の青年の 心の中を、 果てしない堂々巡りが 渦巻いていた。


 そして、 お茶会の前に ウガヤが言った事が、 まざまざと甦る。
「マホロバのような 大国の姫君をもらい受けるからには、 王か皇太子でなくては 話にならない、
 ということは お分かりになりますよね」
 うなずくしかない。

「モクドでは、 陛下も皇太子殿下も すでに正妻とお子がいらっしゃいます。
 マサゴのトコヨベ王も 然り。
 我がカリバネ陛下には 側女(そばめ)がいらっしゃいますが、
 后でいらした殿下の母君は 亡くなられて、 今 正妻は いらっしゃいません。
 しかし、 父君のウナサカ殿下からすれば、 ご自分より年上の婿殿を どう思われるか、
 未知数ではありますが 避けたほうがよい。
 残るのは、 マサゴの皇太子ウルク殿下と あなたです」

「ウ、 ウルクは……」
「はい。 評判が悪すぎます。
 若い女性を 片っ端から手(て)篭(ご)めにしているとか、
 老若男女を 見境無く襲っている とか、 芳しくない噂の持ち主。
 マホロバ王国を 怒らせるわけにはいきません。 問題外です」
「……」

「殿下の母上か妻か、 これしか 選択肢はございません」
 きっぱりと言い切ったウガヤの言葉を 思い出し、 思わず カリバネの顔を じっと見てしまった。
 いまだ 精悍な顔と身体を持つ 現役バリバリの王は、 けっこう女性にもてるのだ。
 カムライは、 我知らず 悲しくなった。


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by まとめwoネタ速neo on 2012/06/02 at 20:12:44

 招かれて 城を訪れたユキアたちは、 丁寧に出迎えられた。 マホロバのウケラ城とは違い、 装飾などは ほとんど目立たない。 入り口正面の、 大弓を持つ銅像だけが 威容を誇ってい...

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コメント
120:こんにちわ^^ by ゆーん on 2012/06/03 at 17:15:52

はじめまして。

何気なく、ふらりと足を運ばせて頂いたのですが、まさかこちらに遊びに来ていただけるとは思いませんでした。さらにはコメントまでいただけるとは。感激でございます。


小説を書いておられるようですね。いや~、驚きました。自分は専ら読むだけなので。


切り絵についてすが、口等についてはバラバラのパーツにしてから最後に張り付けております。なるべく切り離さなくて済むように工夫はしているのですが、どうしても無理な部分も多いので。鼻や口の配置で表情が大きく変わってしまうため、最後にして最大の仕事ってかんじです。

全体の流れとしては元絵にあわせて黒い紙を切っていくだけです。デザインナイフを使わせてもらっています。

だいたい一枚制作するのに5~6時間前後かかります。

サイズはほとんどがA4です。額に入れて飾ってみるとなかなか見れたものですよ。

メインはサブカルチャー系のキャラクターなのですが、リクエストも随時受け付けております^^

そんなところでございます。
まだまだ拙いので、今後とも精一杯努力してゆきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します。


また遊びに来ますね。
失礼します。

121:Re: ゆーん様 by しのぶもじずり on 2012/06/03 at 18:58:31 (コメント編集)

丁寧な説明をありがとうございます。

あれだけのものが 5~6時間で できてしまうのですね。
もっと時間がかかるものと想像していました。

また見に伺います。

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