RSS

薬種狩り 十三の3

 二人は 村の奥へと進み、 海太郎の家を探し始めた。
 村の海側には 風除けの為か 屏風のように松が並んでいるが、
 それぞれの家も 木々で囲まれていたり、 石垣塀が積んであったりしていて、
 見通しは良くない。

「玲―、 何処に居る。 顔を見せろーっ」
 木が倒れた地響きと、 穂田里の怒鳴り声に驚いて、
 あちらこちらの家から、 何事かと村人たちが出てきた。
 驚いて、 棒や鎌などを手にしている者も見受けられたが、
 その中に 玲は居ない。

 それらには一切構わず、 二人は どんどん村の奥に突き進んだ。
 もとより、 穂田里は 方角など気にしていない。
 勘を頼りに 進みたい方に行くだけだ。
 めちゃくちゃに走っているうちに、 つややかな緑の葉を茂らせた 立派な柿の木があった。
 その後ろから 見覚えのある 大きな体が姿を現した。
 迷わず突進した穂田里は 吠えた。
「玲を返せ」

「俺がもらうと言ったはずだ」
「やれるか。 力ずくでも取り返す」
 ずいと近寄って睨みつければ、 海太郎は せせら笑った。
「そんなちゃちな槍では、 俺を突き殺せないと思うぞ」
 穂田里が担いでいる手槍を、 海太郎が揶揄やゆする。
 海太郎は 何も武器を持っていない。
 穂田里は 衣都に向かって 愛用の手槍を(ほう)った。
「預かってくれ。 素手で十分だ」

 穂田里が振り向くと同時に、
 挨拶代りとばかりに 海太郎のこぶしがとんだ。
 不意を突かれて よろめいた穂田里は、 足を踏みしめて何とかこらえた。
 お返しとばかりに 今度は一発お見舞いする。

 同じ力でも 早さがあれば衝撃が強い。
 海太郎の目が本気になった。
 体中の筋肉を総動員して、 穂田里に叩きつけた。
 穂田里は 体ごと吹っ飛ばされる。
 様子をうかがいに来ていた村人から 歓声が上がった。

 海太郎のように、 筋肉で出来上がった 丈夫そうな連中が多い。
 騒ぎに気付いて、 見物人が だんだんと増えてゆく。

 立ちあがった穂田里は、 首を振って気力を取り戻すと、
 海太郎めがけて突進した。
 迎え撃つように突き出された太い腕をかわし、 肩口をつかんで 腹に膝蹴りを入れる。
 見物人がどよめいた。
 海太郎は、 呻きを押し殺して体勢を戻した。
 小山のような体が、 さらに膨れ上がったかのように見えた。

 そこから始まった本格的な殴り合いに、 集まった見物人にも更に熱が入る。
 声援に怒号が混じり、 棒や鎌が振り回された。
 勝っても負けても ただで済みそうに無い雰囲気だ。
 衣都は 預かった手槍を握り締めた。

 叫び声と怒号が沸いた。
 海太郎が 大の字になって後ろに倒れた。
 険悪な空気が どっと押し寄せる。
 荒い息を吐いて 仁王立ちになった穂田里も、 力を使い切ったように 息が上がっている。
 今なら、 そんなに強くなくても、 穂田里を倒せるだろう。
 その後ろ姿に向かって、
 穂先の鞘を払った手槍を構え、 衣都が ひっそりと一歩踏み出した。



戻る★★★次へ

 
トラックバック
トラックバック送信先 :
コメント
▼このエントリーにコメントを残す

   

プロフィール

しのぶもじずり

Author:しのぶもじずり
とりあえず女です。
コメントを頂けると、うれしいです。

最新記事

最新コメント

カテゴリ

検索フォーム

いらっしゃ~い

らんきんぐ

よかったら押してね
 にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ
にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ にほんブログ村 小説ブログへ
 

リンク

このブログをリンクに追加する   リンクフリーです

おきてがみ

FC2以外のブログからお越しの方、クリックで足跡が残せます。
「ことづて」は機能していませんので、ここにはコメントは残せません。

RSSリンクの表示

QRコード

QR

月別アーカイブ

フリーエリア