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薬種狩り 十三の2

 幸い、 猪は出なかったが、
 一度だけ、 夜更けに 異様な気配を感じた二人が目を覚ますと、
 緑色に光る一対の目が 闇の中から じっと見つめていた事があった。

 穂田里が殺気を放つや、 一瞬の躊躇ちゅうちょの後に 素早く消えたが、
 身を翻した一瞬、
 かすかな月明かりを受けて、 灰色の体毛が銀色に輝いたように見えた。

「今のは狼か」
 すっかり気配が無くなるのを待って、 穂田里が呟いた。
「……のようなもの」
 あいまいな答えを不思議に思って 振り向けば、
 衣都の瞳が、 星明かりを映して 爛々と輝いているのが見えた。


 待つことに決めてから 四日目の朝が来た。
 海鳴りの音だけが流れる 静かな朝だ。
 村の様子に変わりは無い。
「玲はどうなっている。 大男もあれっきりだぞ、 天ちゃん。
 あれっ、 天ちゃんは何処だ」
「三日前くらいから居ない」
 ずいぶん静かだと思っていたが、 そのせいだったのか、
 と 今更ながら穂田里は納得した。

 しかし、 居ないとなると不便だった。
 玲の様子を見に行ってもらえない。
「戻ってくるのか?」
「さあ」
 衣都さえも気付かないうちに、 天狗は姿を消していた。
 そろそろ 玲の足も治る頃だ。
 穂田里は これ以上待てないと思った。
 海太郎は四、五日したら出発すると言っていたのに、 その様子もない。
 村を出るなら、 橋を下ろして渡るはずだから、
 待っていれば出てくる と考えていたのだが。

「他に村の出入り口は 無いんだろうか」
 ふと気になる。
「知らない」
 二人は顔を見合わせた。
 まずいかもしれない。
「玲を取り返す」
「分かった」
 言うと、 衣都は おもむろに裂け目の近くに真っ直ぐそびえ立つ杉の木に近寄った。
 駄狗の形身の山刀を 幹の根元に打ち込む。
 樵の斧のようにはいかないが、 根気よく山刀を振るい、
 最後は 穂田里が力ずくで押し倒す。
 めりめりと悲鳴を上げた木が どーんと倒れると、 裂け目に架かる一本橋になった。



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