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薬種狩り 十一の5

「あいつは オニの一族を手なずけたそうじゃないか」
「少し違う気がする。
 確かに 一族最強と ほとんど五分に渡り合ったが、
 手なずけたというなら、 このいっちゃんの方だな」
 後ろに居た衣都に ちらりと目をやる。

 はじめは怖がっていた 柚希里と摩周に懐かれ、
 佑流の教導魂に火をつけ、
 最後まで 敵愾心てきがいしんを燃やしていた 米斗亥に
 「また来るよろし」と 言わせたのは衣都だ。

 大男は 信じられないことを聞いたとでも言うように 目を見開くと、
 ぐいと近づき、 衣都を見た。
「なら この嬢ちゃんでも良い。 くれ」

「どっちもやらない。
 ……えっ?  嬢ちゃんて 誰のことだ」
「この子」
 大男は 真っ直ぐに衣都を指差した。
 さらに顔を近づけ、 クンクンと鼻を鳴らして 匂いを嗅ぐ。
「やっぱり女の子の匂いだ。 俺の鼻はごまかせない」

 穂田里の頭の中が 爆発した。
 可愛がるのに手頃な大きさだと、 ツンツン頭を気易く撫でた。
 頬を 指でつついてみたりもした。
 何かあったら守ってやるからと、 野宿の際には 隣に寝かせた。
 年頃の女の子にしてはいけない事を、 いっぱいしてしまった。

 ドッカーン

 赤くなったり、 青くなったり。
 目は 風に揺れるどんぐり。
 口は 溺れかけの金魚。
 何か言わなくては、 何かしなくてはならないと思うのに、
 爆発の余韻が片付いていない。
 つまり、 頭の中がとっ散らかっていた。

 ちっとも動かなくなった穂田里を見捨てて、 大男が 橋を引き返し始めた。
 衣都が後を追おうとすると、 振り返って言う。
「嬢ちゃんが代わりになるなら、 あいつは返してやってもいいぞ。
 どうするね」
 その頃には、 何処からか出てきた男たちが、
 何人か橋のたもとに 並ぶように立っていた。
 年齢はまちまちだが、 どの男も 最初の大男に負けない筋肉男たちだ。

 「やだ」
 衣都は 思わずあとずさった。
 大男が渡りきったところで、 男たちが滑車を引き、
 橋に繋げられた縄が 巻き取られた。

「俺は どっちでもいいぞ。
 四、五日したら 出発するから、 それまでに気が変わったら 声を掛けてくれ」
 渡ることができなくなった裂け目の向こう側では、 男たちが それぞれの家に帰ってゆく。

「何故だ」
 追いかけた衣都の声に、 一人の男が答えた。
「橋を下ろすのは 出入りのある時だけだ。
 狼や猪が入ってくることがあるからな。
 オニを手なずけたあんたらなら、 そんなものは平気だろ」

 聞きたいのは、 その何故ではない。
 重ねて聞こうとしたが、 筋肉男たちは 遠くへ行ってしまった。
 仕方がないので振り向けば、 穂田里が壊れかけていた。



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コメント
1688: by lime on 2013/10/14 at 08:17:39 (コメント編集)

ああ、ついに気づいた!
今、気づいたのか(笑)
この狼狽ぶりは、しかし・・・凄まじい。
このあといったい、どんなふうに旅を続けるのか、そっちも楽しみです。
とりあえず、玲は、返してもらいましょう^^

1689:Re: lime様 by しのぶもじずり on 2013/10/14 at 15:13:20 (コメント編集)

鈍いにもほどがありますよね。
まあ、こういうやつです。

当面の問題に集中してもらいたいものです。

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