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薬種狩り 十一の4

 焦った穂田里が 度々迷子になったりして、
 玲を見失ってから、 すでに 二日が過ぎていた。

 だいぶ手間がかかったが、 でこぼこの地形を抜けると、
 いきなり目の前が開け、 集落を見つけた。
 なだらかに開けた土地に、 田畑に囲まれて 頑丈そうな建物が点在している。

 一番手前に見える家をめがけて 走りだそうとした穂田里に、
 衣都が 飛びついて止めた。
「止まれ!」
 不意を突かれた穂田里は、 衣都と一緒に その場に倒れた。

「わっ、 何だ」
 慌てて起き上がろうとする穂田里の腰に、衣都がしがみついて 立たせまいとする。
「動くな!」
 言うことを聞かずに身動きしようとして、 穂田里は やっと違和感に気付いた。
 片足が どこにも触っていない。
 宙に浮いている。

 草むらに隠れて分かり難いが、 足元の地面が裂けて 口を開けていた。
 覗いてみると、 けっこう深い。
 放り出された天狗が、
 縁に生えている草にぶら下がって ジタバタしていたのをつまみ上げ、
 改めて息をのんだ。

「あ、 ありがとう。
 落ちるところだった。 た、 た、 た、 助かった」
 穂田里は 落ち着きなくドキドキしていた。
 今のは 何だろう。
 ふわふわの雲に抱かれたような うっとりする柔らかさは。
 いったい何だったのだろう。
 不思議な気分だ。

 礼を言われた衣都は、 黙ってそっぽを向いた。
 わずかばかり苦い顔をしているのを見て、
 この二日間に 迷惑ばかりかけていた事で、 ついに 怒らせてしまったのかと、
 ちょっぴり反省した穂田里だった。
 落ち着こう。

 大きく開いた大地の裂け目は、 見るからに 人間業では跳びこせそうにない。
 村人が通る場所があるはずだ。
 と 二人は裂け目に沿って移動し、
 間もなく 裂け目の幅が少し狭くなっている所に、 丸太と板で橋が架けられているのを見つけた。

 だが、 すんなりと村に入ることはできなかった。
 大きな男が出てきて、 橋を塞ぐように 立ちはだかったのだ。
 単に大きいだけではない。
 太い腕は筋肉が張りつめ、 盛り上がった肩から丈夫そうな首までが、
 筋肉の塊でできている。
「おまえら どこから降って湧いた」
 失礼な言い方だが、 声は普通だ。

「西の山のふもとから 歩いて来た」
「では、 オニの里を通ってきたというのは 本当なのか」
 穂田里の答えに、 大男は驚きを表した。

「玲に会ったのか。
 あいつは何処に居る。 探してたんだ。 教えてくれ」
「俺の家に居る」
「面倒を掛けてすまなかった。 こっちで引き取るから 安心してくれ」
「引き取る必要はない。 俺がもらう」
「やらない」
 穂田里と大男は、 互いに一歩も引かず睨みあった。

 やがて、
「くれ」
「やらない。 あんなものを貰って どうしたいんだ」
 睨みあっているだけでは らちが明かない と見て、
 大男が再度ねだり、 穂田里が断った。



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