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薬種狩り 十一の3

「あれっ、 今、 迷子鈴の音がしなかったか」
 玲の声は聞き逃しても、 迷子鈴の音は 二人の耳に届いた。

「した」
「玲が居ないぞ。
 俺に偉そうなことを言ったくせに、 自分が迷子になったらしい。
 見つけたら 笑ってやろうっと」
 口では 憎たらしいことを言いながらも、
 穂田里は さっさと来た道を引き返す。

 かなり戻ってみたが、 玲は見つからなかった。
 穂田里の血相が変わってゆく。
 衣都がはぐれたからといって 心配はしない。
 穂田里も 何とかなるだろう。
 何しろ 迷子の経験は豊富だ。

 しかし、 玲は 典薬頭のお坊ちゃんだ。
 山野を相手に威張ってみても 役には立たない。
 こんな場所では 一人で生きていけないだろう。
 目の色を変えて探すうち、 穂田里自身がはぐれた。

「おーい、 いっちゃーん、 玲。
 どっちでも良いから 居るなら返事をしろー」
 意外に近い場所から、 迷子鈴の音がした。
 突進した穂田里は、 鈴を持って佇む衣都を発見した。
 玲の姿は無い。

「玲は見つからないか」
 焦りと落胆をにじませた穂田里の目の前に、 衣都が鈴を振って見せた。
「分かったから。 目の前に居るだろ」
「玲様の鈴」

 明日妥流がくれたのは、 それぞれに色の違う紐が付いた 三つの迷子鈴だった。
 衣都が鳴らして見せたのは、 青い紐が付いている。
 玲が貰った鈴だった。
「そうか。 言われてみれば、 そんな気がする」
「おれのはこっち」
 衣都は 赤い紐のついた鈴を見せる。

 穂田里にも 不測の事態が起こったのだと分かった。

 考えてみれば、
 玲が無事でいるなら、 遠慮なく ガンガン鈴を鳴らして呼び寄せ、
 「二人とも気をつけろ。 はぐれるな」
 くらいの事は言いそうだ。

「落ちてた」
 衣都は 地面を指した。
 その指が つつっと動いてさらに先を指す。
 貧弱な藪の小枝、 葉、 そして 地面がどす赤いしみで汚れていた。
 見るからに、 まだ新しい血だ。
 鳥の羽も何枚か落ちている。

「猟師だ」
「肉食のけものということはないのか」
「ない」
 断言した衣都に、 穂田里は いくらかほっとした。

「人間と一緒なら、 飢え死にするという心配はないな」
 偉そうな態度に腹を立てられ、 ボコボコにされる という心配は残っている。
 早めに回収するに越したことはない。

 二人は 人の通った痕跡を探して 追跡を開始した。
 だが、 いくらも進まないうちに 行き詰ってしまった。
 山歩きに慣れていない玲の足跡があれば 分かりやすいはずだが、
 何処をどう探しても 見当たらない。
 どっちに行ったのか さっぱり分からないまま、 立ち往生してしまった。

「忘れられた村とやらを探そう。 村人に尋ねれば 何かわかるかもしれない」
 衣都も素直に頷いた。



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コメント
1674: by lime on 2013/10/10 at 08:03:58 (コメント編集)

3人の旅、それぞれが個性的で、すっごくおもしろいです。
玲、連れ去られたんでしょうか。
でも、大雑把な心配の仕方をする穂田里の距離感が面白いです。
衣都に至っては、取り乱すことなんて一生に一度もなさそう(笑)
玲のいるところが、次なる舞台でしょうか。

1675:Re: lime様 by しのぶもじずり on 2013/10/10 at 11:39:09 (コメント編集)

一応、衣都が主人公のつもりで書いています。
ですが、何を考えているのかさっぱり分からない主人公です。
いまさらですが、それで物語が成立するのかは、賭けです。オイオイ。

ということで、無口で、何を考えているのか不明な人物が、主人公になれるのか。
ご注目ください。(心配)

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