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薬種狩り 十一の2

 見回せば、 見上げるばかりに はるかに切り立った大規模な崖と、
 行き先の見通しを塞ぐように、 こんもりとした山というには小さすぎる土の塊が、
 累々と続く光景しか目に入らない。

《見える所には 無いのう》
「見えない所は 分からないのか」
《よほど特徴のある霊気ならともかく、 見えた方が はっきりするな》
「では、 見晴らしの良い場所に行こう」

 進もうとした穂田里の袖を はっしと玲がつかんだ。
「見晴らしの良い場所に行けば、 天狗苺の在りかが解るのだな。
 まあいい。 手間が省ける。
 そうだ、 穂田里。 僕たちとはぐれたら すぐに迷子鈴を鳴らせ。
 勝手に動き回るな」
 良い物をもらった。
 少しは安心できる と穂田里に念を押して、 玲は袖を放した。

 ところがどっこい。
 行けども 行けども 見晴らしは良くならなかった。
 ぼこぼこと現れる団子のような小山を 登ったり降りたりしても、
 背の高い林があったり、 次の小山があったり、
 見晴らしを邪魔するものが 行く手を塞ぐ。
 天狗の能力が 宝の持ち腐れだ。
 結局、 足で稼ぐしかない。

 玲も すっかり野宿に慣れたと思いきや、 相変わらず文句が多い。
 特に 天狗が話に加わると、 一人だけ 蚊帳かやの外にされるのが 気に入らない。
「存在するなら姿を現せ!  ひきょう者!」
 言いたい放題である。

 言われっぱなしの天狗も ついに困って、
 衣都を通じて コツを伝授しようとしてみた。 …… が、

「目を凝らすな。 気にするな。 天狗は居る」
 何のことだか さっぱり解らない。

 衣都の肩に向かって、 笑ったり怒ったりしている穂田里を見ながら、
 後ろから 付いて歩いていた玲だったが、
 地形が やたらに複雑なだけで、 目に見えて景色が変わる訳でなし。
「飽きた。 少し休もう」
 言っては見たものの、
 天狗を相手に 楽しそうな穂田里と衣都は その声に気付くことなく、
 どんどん先へ行ってしまった。
 置いてきぼりだ。

 二人は 前方の大きな木を回って 見えなくなってしまった。
 仕方なく 追いかけようと踏み出した時、
 横手の小山から 物音が聞こえたような気がした。
 曲がった先から ぐるりと回って 近くに来たのかもしれない。
 玲は 近道をしてやろうと小山を登った。

 しかし 木やら草やらが邪魔をして、 やっぱり見通しは悪い。
 目をこらしても、 二人の姿を見つけられない。
 すると、 今度は 遠くからかすかに穂田里の声が聞こえた。
 勘違いをしたらしい。
 元の場所に戻ろうと振り返った途端、
「何をしている」
 意外に近いところから 声がした。

 驚いた拍子に 体勢が崩れた。
 足首から グキッと嫌な感じの音がした。
 そのまま倒れて、 短い斜面を転がり落ちる。
 懐からこぼれ出た迷子鈴が、 チリンと澄んだ音を立てた。



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