RSS

薬種狩り 十一の1

「おい、 本当に大丈夫なのか」
「ど素人は黙っているだら。 邪魔だ」

 何かと穂田里に咬みつく若い男の名を 米斗亥まいとがいという。
 本人曰く、 火薬作りの名人なのだとか。
 威力の大きい新型火薬を発明したと自慢する。
 東に行けないと困っていた三人を 冷ややかに眺めながら、
 心に迷いがあったのを 村長に見破られ、 白状させられた。

 東山の裾に、 塩の洞窟と呼ばれている洞窟があった。
 奥に進めば 岩塩の層に行き当たる。
 海に面していない山里で、
 外界と途絶した暮らしを営むには 無くてはならない塩が、 ここで採れる。
 定期的に人が入るが、 洞窟の中ほどまでである。
 その先まで行こうとする者は めったに居ない。
 そのめったに居ない人間の一人が 米斗亥だった。

 洞窟は 思いのほか長い。
 松明の炎が揺れるのを見て、 抜ける先があるはずだと探検した。
 かすかに明かりが差し込む場所まで行きついたが、
 その先は 狭くなっていて通れなかった為、 諦めて戻った。
 あと少しで 山の向こう側に抜け出るはずだと睨んでいる。

 掘るには時間がかかるが、自慢の新型火薬なら 一発で通れるようになるはずだ。
 火薬の威力を自慢したい気持ちと、
 気に入らない連中が困る様子に、 ざまあみろという気持ちの間で、
 ちょっとばかり 揺れ動いたところを 村長に見透かされた。

 その上、 衣都から
 「助けてくれ。 頼む」
 と、 真っ直ぐに お願いされてしまい、
「お、 おう」
 うっかり 承諾してしまったのだった。

 経緯はどうあれ、 やると決めたからには 米斗亥の手際は良かった。
 そうして 四人は洞窟の奥深くに来ているのだ。

「塩の洞窟が塞がったら 困るのはわいらだら。 失敗はしない。
 任せておくだら。 準備はできた。
 吹っ飛びたくなかったら、 もっと後ろに下がるだら」
 退避して、 導火線に点火する。

 塩の洞窟に 重い爆音が響いた。
 衣都の肩から、 天狗が吹っ飛んで転げ落ちた。

 音と振動が収まるのを待って、 四人が火薬を仕掛けた場所に戻ってみると、
 ぽっかりと 丸い青空が目に入った。
「んー、 思ったより大きな穴を開けてしまっただら。
 まっ、 良いか」
 名人の自信には いささかのほころびもなかったようだ。

 衣都が振り返って 「ありがとう」 と礼を言うと、
「おう、 気をつけて行くだら。
 役目を終えたら、 ゆっくり遊びに来るよろし」
 あくまでも衣都一人だけに、 ぶっきらぼうな言葉を投げかけ、
 米斗亥は 颯爽と洞窟に引き返して行った。

 睨むような 剣呑な目つきで見送った穂田里を、
 天狗は 面白そうに笑った。
《ふおっふおっふおっふおっ、 若い者は良いのう。
 甘酸っぱい青春の香りが 漂って来るようじゃ》

 穂田里は、 面白くもなさそうに 天狗を睨んだ。
「天ちゃん、 それより 霊力があるのはどっちだ」



戻る★★★次へ

 
トラックバック
トラックバック送信先 :
コメント
▼このエントリーにコメントを残す

   

プロフィール

しのぶもじずり

Author:しのぶもじずり
とりあえず女です。
コメントを頂けると、うれしいです。

最新記事

最新コメント

カテゴリ

検索フォーム

いらっしゃ~い

らんきんぐ

よかったら押してね
 にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ
にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ にほんブログ村 小説ブログへ
 

リンク

このブログをリンクに追加する   リンクフリーです

おきてがみ

FC2以外のブログからお越しの方、クリックで足跡が残せます。
「ことづて」は機能していませんので、ここにはコメントは残せません。

RSSリンクの表示

QRコード

QR

月別アーカイブ

フリーエリア