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薬種狩り 九の1

 佑流は叱られた。
 それはもう、 こっぴどく。
 村中から叱られた。

 導師の怒鳴り声から とっさに逃げた行為は 防衛本能だから仕方が無いとしても、
 その後 いたずらに保身を図るあまり、
 子供たちの指導を怠り、
 摩周が行方不明になっている事にも気付かなかったばかりか、
 重要な手掛かりを握ったまま、 のんきにコソコソしていた事を めいっぱい叱られた。

 急に不機嫌になった玲から逃れようと、 外に出てきた穂田里が、
 松明を掲げて走り回る村人たちの様子に 好奇心を持ち、 騒動の仔細を訪ねなければ、
 ほっとけ沢で 足に大けがを負い、 動けなくなっていた摩周の発見は もっと遅くなっていただろう。
 真っ暗な夜の沢に 身動きのならない子供が取り残されたのだ。
 一歩間違えれば、 取り返しのつかない事態さえありえた。

 摩周の足に 折れた木の枝が刺さり、 ざっくりと切れているという。
 玲と穂田里も 治療の協力を申し入れたが、 大丈夫だと断られた。
「偉そうに典薬寮から来たと言ったが、 良く聞いてみれば まだ卵だと言うではないか。
 村には ちゃんとしたまじない師が居るだら。
 ひよっこにもなっていない卵に 用はないだら」

「うわあ、 その言い方、 傷つくなあ。
 『丸い卵も切りようで四角、 物も言いようで角が立つ』 って知らないのか。
 断るにも 言い方があるだろう。 尖がってるぞ。
 それに、 俺たちって優秀な卵だから けっこう役に立つのに」
 穂田里は納得しなかったが、 何しろ断られた。

 隠忍の里に、 いつもの日常が戻ってきた。
 佑流は へこみから立ち直って 子供たちの指導に励み、
 三人は する事も無く 導師が口を開くのを待った。
 が、 四、五日経っても、 なしのつぶてである。
 こっちから押し掛けることにした。

「いったい 何時まで待てば 前向きな回答が出てくるんだ」
 穂田里の問いに、 導師は慌てるそぶりも無く 三人を広場へと誘った。
 立ちどまった場所からは 正面に寝床山が見える。
 導師は 片手を差し伸べて、 三人の目を山へといざなった。

「今は 寝床山のてっぺんに お天道様が沈む。
 秋が深まった頃には、 南に寄り添う早寝山に沈むようになるだら。
 その時は登ってもよろし。
 ただし、 行儀よく登るだら。 荒らしてはいかんのだら」

「秋…………」
 一言呟いて、 三人は言葉を失った。
 寝床山に天狗苺があれば良し、 無ければ間に合わない。
 ここで足止めを食っては、 初雪が降るまでに 残りの二か所を捜索するのは、
 どう考えても無理だ。

 玲の気配が変わった。
 ゆっくりと導師の前に歩み寄り、
 正面から見上げて、 静かに口を開いた。

「『教えの書』を 全部読んだ」



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