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薬種狩り 八の6

 明日妥流は 櫓に登ろうとしていた村長を捕まえ、 事の次第を告げた。
 村長が すでに櫓の上にいた導師に合図を送ると、
 導師は すぐさま大声で叫び、 村人たちの様子が一変した。

 群衆の中から 七人の男女が人々を掻き分けて櫓に近づく。
 途中で おろおろしていた佑流を見つけた一人が、
 ついでとばかりに 引っ張って櫓に上がり、
 導師を交えた九人が 代表して日暮れの儀式を始めた。
 残りは 村長がかき集めて、 捜索隊を組む。


 三人は、 あてがわれた教堂の奥まった小部屋で、
 外の騒動にも気付かず、 それぞれが 思い思いの時間を過ごしていた。

 玲は 置いてあった「教えの書」を そぞろめくっている。
 衣都は 熱心に字の練習に励んでいたが、
 ちっとも上達する気配が無い事に 自分で首をかしげていた。
 穂田里は 暇を持て余して ごろ寝を決め込んでいた。
 穂田里の腹の上では、 天狗が高いびきをかいている。
 導師は なかなかに忙しく、 前向きに検討した結果が どうなったのかをまだ聞いていない。

 そんなところに、 佑流がこそこそと顔を覗かせた。
「あのー、 ちょっと良いだか」
「お帰り。 長いお出かけだったな。 いいとも。 俺らに何の用だ?」
 暇つぶしができる、 とばかりに 穂田里が起き上った。
 転げ落ちた天狗は、 何事も無かったかのように 落ちた場所で眠り続けている。

「導師様は お怒りだか。
 勢いで逃げだしたけんど、 怖くて帰れなかったのだら」
「カンカンに怒っていたな。 …… 俺たちに。
 おかげで 教導さんの代わりをさせられた。
 導師には まだ会っていないのか」

「会ったような 会わないような。
 それどころではないらしいだら。 誰か 行方不明になったらしいのだら。
 捜索隊を出すらしい。 大騒ぎだら」
「教導さんの他に?  いったい誰が」
「さあ。 自分の事で 精いっぱいだったから」

 どさくさまぎれに戻ってきたものの、 今更ながら情けなくなった。
 子供たちの勉強も 放り出してしまったのだ。
 ため息をついて 部屋の中を見渡せば、 衣都の字が目に飛び込んだ。
 これは何とかしてやらねば という教導魂に火が付いた。

「んー、 摩周といい勝負だら。
 筆の持ち方を ちゃんとするだら。 ああ違う。 こんな風に持つだら。
 摩周は 遊んでばかりで練習しないから 分かるんだけんど、
 真面目に取り組んでいるのに これだけ下手なのは、 摩周より手ごわいだら。
 あの子だって 練習すれば もう少し上手になれるだに、
 今日も朝から 遊びに出かけてしまって、 しょうがないだら。
 ほっとけ沢は 危ない場所があるだに」
 ぶつぶつ文句を言いながら、 熱心に指導をし始めた佑流であった。

 本来の仕事だから 没頭するうちに落ち着いてきて、
 小さな部屋は 和やかな空気に満たされていった。

「げっ!」
 教えの書を読んでいた玲が、 不意に 下品な声を上げた。



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