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薬種狩り 八の5

 導師が 三人との話を打ち切った。
 しかし、 やはり教導が居ない。
 村内を迷走しているのか、 職場放棄に気付いて どこかで落ち込んでいるのか、
 佑流という教導は、 いまだ行方不明のままだった。
「今日も手伝うよろし」
 また、 いいように使われそうだ。

「あれ、 衣都さんたち。 まだ居ただか。 何しているだか」
 子供たちの中から、 柚希里が 驚いたような声を上げた。

「臨時の先生だ。 摩周から聞かなかったのか」
 衣都に代わって 穂田里が答えると、
 少し考えてから はきはきと言い出した。
「先生とは 教導のことだか。
 おまんらは典薬寮を辞めて導師様の弟子になっただか。
 それは考え直した方がよろし。
 昨日から 村中がおまんらの話題で持ちきりだら。
 わざわざ導師様のお説教を聞きに戻って来るとは、
 なんという 物ず……もの、ものものもの」
 導師がすぐ近くにいる事に はたと気付いて、 言葉が引っ掛かった。

「俺たち、 有名人になったのかあ」
 のんびりした穂田里の感慨が 助け船になった。
 柚希里が深呼吸をして 持ち直した。
「うん、 うちでも 三人の話で盛り上がって、
 大笑……わ、 わら、 わらわらわら」
「分かったから、 そこは飛ばそう」

「はー、 それなのに、 摩周は何も言わなかっただら。
 どしてだろ」
 柚希里が首をかしげていると、

「摩周は何処だ」 衣都が聞いた。
「朝早くから飛び出していった。
 家の手伝いを怠けて遊びに行っただら」
 ほんの少し顔をしかめた衣都に、
 いつものことだと柚希里は肩をすくめた。

 しかし、 日暮れに近くなっても、 摩周は帰ってこなかった。

 明日妥流と押希里は、
 摩周がいつも遊ぶ場所の周辺や 往き帰りに通る辺りを探しまわったが、
 何処にも見つからない。
 近所の人や 仲の良い子供にも尋ねたが、 誰も摩周を見たという人がいない。

 代わりに、
 きっかけを無くして 帰るに帰れず、 頭を抱えてふらついていた佑流を発見した。
「お願いがあるのだら。
 導師様が怒っていないか 様子を見てもらえないだらか。
 怒っているようなら、 とりなして欲しいだら。
 明日妥流さんなら 頼りになるのだら」
 取りすがってくる佑流に かまっているどころではない。
 すげなく断って、 息子を探した。

 にぎやかな町とは違い、
 山々に囲まれた隠忍の里では、 日が落ちれば すっぽりと闇に沈む。
 それはどんな子供でも、
 否、 子供だからこそ 夜に取り残される恐怖は 身にしみて知っている。
 無事でいるなら、 必ず 日暮れ時までには帰るはずだった。
 明日妥流と押希里は焦った。
 儀式に集まってきた人々を 見境なく片っ端から捕まえ、
 息子を見なかったかと問いただしたが、
 確かな目撃情報が無い。
 どの子も似なような身なりだから、 遠目では見分けがつきにくいのだ。
 摩周を見かけた、 とはっきり言える者は 出てこなかった。



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