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薬種狩り 八の4

 成り行きで 先生を務める羽目になった。

 玲の字は きれいだ。
 穂田里の字は 豪快だが、 それなりに しっかりしている。
 衣都の字を見た導師は
「おまんは子供らと一緒に練習するがよろし」と断った。

 衣都が 筆記用具を借りて練習していると、 隣からこっそりと声が掛かった。
「ちっこいの、 探し物は見つけただか」
 摩周だった。
「まだ」
「ふううん。 わいが手伝ってやろうか」
「いい」
 肝心の山に入れそうにない。
「まだ、 いらない」

 重ねて言う衣都に、
 なおも話しかけようとする摩周の頭を、 ぐいと大きな手が押さえた。
「こらこら、 そこ。 無駄話をしない」
 先生気どりが様にならない穂田里の横やりである。
「わっ、 いっちゃんの字。 摩周とどっこいなんだなあ。
 良い。 いっちゃんだから許す」
 えこひいきもいいとこ である。

 摩周はもちろん、 当の衣都も 納得のいかない顔をしているが、 穂田里は気にしない。
 見えないのを良いことに、 ちゃっかりと逃げ出していた天狗は、
 いつの間にか 衣都の肩に戻って笑っていたが、
 本来 子供たちを指導する役目の教導は、
 飛び出したきり、 ようとして行方が知れぬままだった。
 教導の行方不明をほったらかしにしたまま、
 小さい子供たちの授業は 粛々と進んでいった。


 集会を開いたり、 子供たちに勉強を教えたりする大きな建物は、 教堂と呼ばれていた。
 三人は 昨夜からそこに泊めてもらい、 導師の攻略に励んでいた。
「うちに泊まるだか」と 村長が顔じゅうをへの字にして誘ってくれたが、
「止めておくのがよろし」というみんなの意見に従ったのだ。

 翌日は、 玲がこれまでの経緯を 理路整然と説明する事が出来た。
 声の大きさでは負けるが、 偉そうな態度と美貌で対抗し、
 善戦した。

「僕たちが独自に得た情報によると、 天狗苺は 霊力のある土地にしか生えない。
 むやみに探しても無駄なのだ。
 あの山には その条件がある。
 あなたも 導師と呼ばれる人間であれば、
 病に苦しみ、 死を待つ人々を救う事に 反対は出来ないはずだ」
 美しい顔できりりと睨めば、 なかなかの迫力である。

「話は分かった。 だが、 長い間従ってきた おきてというものがある。
 掟を守る事によって、 わいらは 辛く苦しい暮らしを乗り越えてきたのだ。
 大切な掟なのだ。
 掟は守る為にこそある。
 簡単に破って良いものではないのだら。
 すぐには無理だ。 待つ気はあるだか。 それなら 手が無いでもない。
 前向きに検討するだら」

「最後の一言が、 ちょっと気になるなあ。
 検討するだけってことは ないよな」
 穂田里の指摘が、 それまで落ち着いていた導師の声を 一気に大きくさせた。
「分かっているだか。
 わいらの先祖が おまんらの先祖に迫害されたことを。
 前向きに検討するのは わいらの心が広いからなのだ。
 発言を 即悔い改めよ!」

 折悪しく 丁度そこにやって来た子供が、 驚いてひっくり返った。
 後から来た子供たちは 入口で様子をうかがっている。
 前日の子供よりも少し年長の子たちが 集まってきていだ。
「学びの時間なのだ」



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