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薬種狩り 八の3

「村長、 頼みがある。
 気を悪くした人が居たみたいだが、 偉そうな態度は 玲の地だ。
 権威を嵩に従わせようというんじゃないんだ。
 帝は 安易にどうでもいい勅命を出す方ではない。
 ただ事ではない事態に陥っているのは確かなのだ。
 朝廷も せっぱつまっている。
 手をこまねいていては、 大勢の命にかかわる。
 西にある寝床山とかいう山に 探している薬草があるかもしれないのだ。
 協力してくれ」

 ふんふんと聞いていた村長は、 再び耳栓をつけ出した。
「寝床山は 導師の扱いなのだら。
 あっちに言うのだら」
 耳障りな大声を放ち、 顔じゅうの皺が 全部への字になった。
 笑ったらしい。

 途端に、 脳味噌をかき回す例の大声が 三人の鼓膜を襲った。
「寝床山は わいらにとって 神聖な山なのだ。
 よそ者は立ち入り禁止なのだ」
「とぼけた名前の山なのに?」
 穂田里も 声だけは負けずに言い返したが、 内容がまずい。
「お天道様が 夜になると眠る山だから、 寝床山なのだ。
 その名前の 何処がとぼけているのだか。
 お山を馬鹿にするなーっ!」
 怒らせてしまった。
 藪蛇っぽい。

「そんなに怒鳴るな。 悪気はない。
 思った事が そのまま口から出てしまっただけだ」
 墓穴を掘ったっぽい。

 話しあいなのか 怒鳴り合いなのか と言うと、 大声の応酬は後者になる。
 両者過熱して、 大声は とどまる事を知らず、
 村長さえ 耳栓の上から 更に手で押さえるほどになった。
 もはや何を言っているのか、 内容は不明である。

 どれほどの間 やり合っていただろうか。
 双方の息が上がり、 互いの健闘を認め合うかのように 視線が交わった。
 束の間、 静寂が戻った。
 そう思った玲と衣都が、
 塞いでいた手を耳から離したのは 間違いだった。

 怒鳴り声の代わりに、 ぴーぴーぎゃーぎゃーと泣きわめく声が 浮き上がった。
 入口付近に固まり、 怯えきって泣く 子供たちの声だ。
 ある者たちは 震えながら抱き合い、
 またある者は 手放しで号泣し、
 床に丸くうずくまって 動かなくなっている子供もいる。
 それはそれで、 かなりやかましい。

「むっ、 子供たちの 学びの時間なのだ。 引き取ってもらおう」
 導師は言い捨てて、 子供らを手招きした。
「そんなところに居ないで 入りなさい。 佑流たすくるは何処だ」
 導師に問われ、 子供らは外を指差した。

「ひっく、 教導様は、 ぐすん、 あっちに逃げて行っただら」
 よほど遠くまで逃げて行ったたらしく、
 子供たちに勉強を教えるはずの教導は、 呼べど叫べど姿を現さない。

「おまんらのせいだら。 読み書きを教える手伝いをするよろし」



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1638:なるほど by ネット on 2013/09/21 at 19:33:11 (コメント編集)

子供たちから、仲良くなりますか^^
しかし、ちっこいおっさん天狗は、どこへ行ったのかなぁ~

1639:Re: なるほど by しのぶもじずり on 2013/09/21 at 23:15:01 (コメント編集)

ネット様

> しかし、ちっこいおっさん天狗は、どこへ行ったのかなぁ~
うわあ、そこ、気になっちゃいましたか。
天狗が何をしていたのかは、次回に判明します。

はじめは、天狗の動きを書いたのですが、
テンポが悪い気がして、大幅に削除しました。
次回で、あっさり一行で片付けてしまいます。
削除しないい方が良かったかなあ。悩むわ~。

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