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薬種狩り 八の1

 茂みに囲まれた小さな窪地に、
 まったりと寛ぐ穂田里と しかめっ面の玲が隠れていた。
 ガサガサと茂みが揺れて、 衣都が現れた。
「駄目だ」 と 首を横に振る。

「んー、 連中、 まだ山を見張ってるのか。
 すっかり警戒させてしまったな」
「こうなったら、 こっそり登るのは難しい。 作戦を変えよう」
 玲が きっぱりと言った。
「作戦なんかあったのか?」
 穂田里の疑問を無視して、 玲は先を続けた。

「責任者にあって、 直談判する。
 村長は 話が分かりそうだ」
「しかし 何処にいるんだ。 村長の家なんか知らないぞ。
 全員のしちゃった方が 早いかも」
「櫓のある広場の傍に 大きな建物があったろう。
 大きさはもちろんだが、 形も他の建物とは違うようだ。
 あれではないか」


 翌日の夜明けを少し過ぎ、
 村人が仕事に出払う頃合いを図って、 三人は広場を横切った。
 思った通り、 広場に人は見当たらない。
 堂々と建物の入り口をくぐった。
 入ったところは 広い部屋になっていた。
 そして、 そこには 予想もしない光景が三人を待っていたのだった。

 ぎっしりと隙間も出来ないほどの人間が座り込んでいる。
 村の住人が全部集まっているに違いない。
 男女はもちろん、 年寄りから子供までが勢ぞろいだ。
 一段高くなった壇上で話していた男が、 突然入ってきた三人を見て 言葉をとぎらせた。
 夕暮れ時の儀式で、 村長の隣に立っていた 壮年の大きな男だ。
 気付いた村人たちが、 一斉に振り返って 三人を見た。
 作戦は 最初から想定外の事態に陥った。

 今なら 誰も寝床山を見ている村人は居ない。
 絶好の機会だというのに、 わざわざ一番面倒なところに来合わせてしまったようだ。
 かといって ここで引き返したら 全員で追いかけてきそうだ。

「良い心がけだ。 前に来なさい。 今日は特に力を入れて長めにやろう」
 壇上の大男が手招きをした。
 村人たちの肩が、 がっくりと うなだれたように見えるのは 気のせいだろうか。
 それでも体を寄せ合って 三人の通り道を作る。
 ここまで来たら なるようにしかならない。
 何が始まるのか解らないが、
 覚悟を決めて、 勧められるままに一番前へと出て座った。
 すぐ隣には 目当ての村長も座っている。

「では 続きを始めよう。
 『権威を嵩に、 威を借る者を 遠ざけよ』
 自分で作り上げた力ではなく、 他人の持つ権威を振りかざして迫る者に ろくな人間は居ない。
 『暴力で解決を図ろうとする者を 遠ざけよ』
 知恵の無い者のすることである」

 大男は 鋭い目つきで睨みをきかせながら、
 何処から出てくるのだと思うような大声で、 まるで聴衆を威嚇いかくするように説教をする。
 『教えの書』を使った講義なのか。
 眉間に深い皺を刻み、 まなじりを決して 睨みつけ、
 視線をそらすことを許さない。



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