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薬種狩り 七の6

 翌日は 夜明けと共に起きだし、
 狩りに行くという明日妥流と 家の前で別れた。
 目指すは 西に聳える寝床山だ。

《山頂近くに 一番霊気が強い》 という天狗を信じて、 登り口を探した。
 神域の結界を表したつもりか。 山裾には 間隔をおいて 様々な形の柱が立っている。
 なだらかで こんもりとした姿は 登り易そうに見えた。
「ここまで来た道に比べれば、 庭遊びみたいなものだ。
 行くか」

 穂田里の掛け声で 山に踏み出そうとした時、
 何処から見ていたものやら、 怒鳴り声と 何人かの荒々しい足音が近づいてきた。
「止まれーっ!  お山は神聖な神域だ。 よそ者は入るな」
 明日妥流一家の 友好的な態度に安心しきっていたから、
 事情を説明して 説得しようと、 三人は踏みとどまった。

 しかし、 駆けつけて来た男たちは 全然友好的には見えなかった。
 手に手に 棒や鋤や鍬を構えて 三人を取り囲み、 睨みつけてきた。
 隠忍の一族が、 全員明日妥流のように 気が良い人間ばかりではないという事だ。
 むしろ 明日妥流が少数派らしい。

「困ったなあ。 この山で薬草を探したいだけだ。
 それ以外は何もしない。 山を荒さない。 丁寧にそうっと探す」
 穂田里が交渉に当たった。

「駄目だ、 駄目だ。 お山には 誰も登らせないのだ」
「そうだ。 だから よそ者は信用できないのだら。 出て行け」
 聞く耳を持ってもらえない。
 力ずくで追い出す気が満々だ。

 騒ぎを聞きつけた村人が 次第に数を増して 集まってきた。
 武器になりそうなものを持っている者が多い。
 血の気の多そうなのが 勢いのままに殴りかかってきた。

 機先を制して 穂田里が手槍を振りまわし、 軽く払いのける。
「忠告しておくが、 暴力に頼るのは止めた方が無難だぞ。
 俺は めちゃくちゃ強い。
 これだけ大勢にかかってこられると 手加減もしにくいから、
 軽い怪我では済まなくなる。
 覚悟はあるのか」

 だが、ひるんだと見えたのは 一瞬だった。
「かまうものか。 出ていかないなら 追い出すだけだ」
 どんどんこじれていく。
 もはや一触即発になったその時、 玲が 大声を上げて進み出た。

「控えーっ、
 この紋どころが…… 違った、 この書付が目に入らぬか。
 恐れ多くも 帝の勅書であるぞ」
 懐から『勅書』と書かれた物を取り出し、高々と振りかざした。
 態度のでかさでは 誰にも負けない。
「我らは 帝の勅命を受けて 典薬寮から来た。
 朝廷に逆らうと ただでは済まぬぞ。
 皆の者、 おとなしく勅命に従え」

 ははーっ とひれ伏す村人は 皆無だった。
 そうは簡単にいかない。

「それがどうした。
 『権威をかさに、 る者を遠ざけよ』
 と 教えの書にあるのだ。
 とっとと帰れ」
 挑戦的な目つきの若い男が ズイと棒をつきつけてきた。
「わいらは、 おまんらの迫害から逃れて この地に隠れ住んだ。
 この国に恨みはあっても 帝に従ういわれはない。
 帰れ!  寝床山には登らせない。
 無理に登ると言うなら 容赦はしない。
 おまんらがどれだけ強かろうが、 最後の一人になっても 戦い、 守って見せるのだら」

「駄目だ。 こいつら本気だ」
 穂田里が 顔をしかめる。
「勝てそうもないのか?」
 玲は 思いっきり不機嫌になった。
「俺は大丈夫だが、 玲はやられちゃうだろう。
 何しろ数が多い」
「衣都は どうなる」
「いっちゃんは 俺が守るさ」
「くそっ」

「撤退」
 衣都の冷静な声が 二人を促した。



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