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薬種狩り 七の2

 初めに見かけた建物に近づき、 声を掛けて見たが 返事がない。
 続けて二、三軒、 声を掛けてみたが、 どの家からも返事がない。
 横手に回り、 開けっぱなしの窓から中を覗いてみても、 やはり誰もいない。
 留守のようだ。

 そのままの勢いで 片っ端から目についた家々を次々に当たってみるが、
 どれも同じように留守だ。
 思い切って 入口の扉を開けてみれば、 特に戸締りもしていなくて 簡単に開いた。
 ついさっきまでそこに人が居て、 暮らしを営んでいたような気配がある。

「何だこりゃ。 ここは幽霊船か。
 村中の家が空っぽだ。 いったいどーなってるんだ」

 空は すでに真っ赤に焼けている。
 間もなく 夜の帳が下りてくるはずだが、 留守の家に勝手にあがりこむ訳にもいかない。
 戸惑いながら めくらめっぽうに進んでいたら、
 盆踊りの櫓のようなものが組まれ、 一段高くなった所に 人物が二人立っているのが見えた。
 一人は 長身でがっしりとした 威厳を感じさせる男。
 もう一人は 背の低い 小太りの老人。
 二人は隣り合い、
 揃って 夕日に向かって両手を上げては その手を合わせる事を 何度か繰り返していた。
 櫓ごと おごそかな赤色に包まれている。
 尋ねるまでも無く、 祈りの儀式だと見て取れた。

 邪魔をしないように そっと近づいてみると、
 そこは 村の中心に当たる広場らしい。
 櫓の下には 老若男女が集まっていて、 櫓の上と同じように 祈りをささげている。
 村のたたずまい同様、 人々の姿も どこか風変わりである。
 身に着けている物はもちろんなのだが、
 赤い髪の毛が異様に縮れているばかりか 肌の色がどこか緑がかっていた。
 夕日に照らされて くすんで見えている。
 背丈は総じて高い。

 夕日は刻々と山の端に姿を隠し、 すみれ色の闇が降りて、 儀式は終わった。
 静かなざわめきと共に 人々が散っていく。
 三人の居る方向に進んできた何人かが、 驚いて叫び声を上げた。
「わっ」
 玲と穂田里は その声に驚いて、 やっぱり叫んだ。
「わあーっ」
 その場の空気が、 一瞬にして固まった。
 身動き一つ無く 凍りついた場面が、
 やがて 一触即発の不穏を、 じわじわとはらんでいく。

「一夜の宿を頼みたい」
 危ない気配をものともせず、 玲が唐突に言ったのをきっかけに、
 広場が騒然となった。
 ひときわ屈強な男たちが 三人を取り囲み、 女子供が逃げ散った。

「まずは挨拶だろう。 こんにちわ、 とか、 元気そうで何よりだ、 とか。
 えーと、 儲かりまっか」
「何だ、 それ」
「どこかの挨拶」
 村人たちをそっちのけにして、 話し出した 玲と穂田里に呆れたのか、
 誰も返事を返そうとしない。
 緑がかった瞳で睨むばかりだ。
 いきなり攻撃されなかったのは、 幸運と言える。
 地の利も、 人数も相手に有利だ。



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