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薬種狩り 七の1

 たどり着いた先に、 隠忍の里があった。

「地図よりも 西寄りだったな。
 状況を考えれば、 このくらいの誤差は 許容の範囲内だ」
 木々が途切れた先に 畑らしきものを見た玲は、 面白くもなさそうに断言した。
「それより、 こんなところに 人が住んでいる方が驚きだ」
 穂田里は 信じられないと言いたげに目を丸くする。
 全く隔絶された村だ。
 よくもまあ、 長い年月の間 無事に暮らしていたものだと感心するしかない。

 改めて観察すれば、
 植えてある作物は よくある穀物や野菜だが、 畑の作りや植え方が少し風変わりだ。
 ちらほらと見える建物も 一風変わっている。
 人の姿は まだ見えない。
 ひっそりと静かな村だ。

《あそこだ》
 天狗が もったいぶって おもむろに指した方向は、
 村の西に ひときわ高く聳える山の頂だった。
 すぐ後ろに 寄り添うように低い頂を従えている。
 右側の斜面に 傾いた夕日が近づいてきていた。

「今日は もう無理だな。 明日登ろう。
 これで役目が果たせる。 さっさと天狗苺を採って 都に帰ろうぜ。
 懐かしのせんべい布団と、 きれいなお姉ちゃんたちが 俺を待っている」
《これ、 早まるな。
 確かにあの山には 霊気が溜まっておる。
 最低限の条件は整っておるのだが、 だからといって 必ず生えているとは限らん。
 探してみてのお楽しみ というところじゃ。
 見つからなくても わしのせいにするなよ》
「ええーっ、 がっかりするような事を言わないでくれ。 期待したじゃないか」
《無いとも言っとらん。 しっかり探せ》
 結局、 最後は体力仕事という事だ。

「おい、 天狗とやらが何か言っているんだろ。 説明しろ。
 期待が持てるのか 持てないのか はっきりしてもらおうじゃないか」
 独り言にしか聞こえない穂田里のわめき声に 疎外感を感じて、 玲が噛みついた。

 衣都は、 衣都なりに 精いっぱい努力した。
 山を指差す。
「あそこ、 可能性はある。 確実ではない」
「簡潔な説明ありがとう。
 どっちにしろ、 そろそろ今夜のねぐらを確保したい。
 どこか 泊めてくれそうな家を探そう。
 人家があるというのに、 野宿は嫌だ」
 三人は 静まり返った村に足を踏み入れた。



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