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薬種狩り 六の6

 衣都が 目を丸くした。
「見えるのか」

「ん?  おじさん?」
 玲には、 何が何だかさっぱりだ。

「ってことは、 やっぱり居るんだ。
 ちっさいおじさん」
 一転して パッと明るい表情になった穂田里は、 衣都の肩に顔を近づける。

《こらこらこらあ!  ちっさいおじさんとは失礼千万な。
 天狗様と呼べ!》
 こぶし二つ分ほどの小さな天狗は、 赤ら顔を更に真っ赤にして怒鳴り返した。
「わっ、 しゃべった」
「ずっと見えていたのか」
「いや、 雷が光った時から何となく」

 玲は、 穂田里と衣都のやりとりが 全く理解できずに、 むっとした。
「いったい 何を言っている。
 赤鼻のちっさいおじさんとは何だ。 そんなものは居ないぞ。
 しっかりしろ。 気を確かに持て」

《この無礼者!  天狗様じゃと言う取ろうが。
 …… そうか、 こやつには見えておらんのじゃな》
 それどころか 声も聞こえていない。
 玲は 穂田里を正気に戻そうとして、 頬をペチペチと叩き、 瞳孔を覗き込む。

「やめろ。 居るだろうそこに。
 天狗と名乗る 正体不明のちびっこが」
《こらあっ!》
「しっかりしろ。 そんなものは居ない」
 いくら言い争っても決着はつかない。
 どちらも正しいからだ。
 困った衣都は なんとか説明しようと口を開いた。
 放っておいたら、 先に進めそうにない。

「天狗は居る。 でも 普通は見えない」
《様を忘れているぞ。 衣都》
「ごく稀に 見える子供がいる。 たまに現れて、 ついて来る」
 何故 ついて来るのかは分からない。
 詳しい正体は 衣都も知らない。
 が、 天狗本人の弁によれば、 大昔から 人々に役立つ薬を教えてきた、
 人間にとっては ありがた~い存在なのだという。

「衣都にも見えているのか。 ちっさいおじさんだか、 天狗だかが」
 半信半疑の玲が問いかけた。
 天狗は大いに不満らしく、 睨んでいるが、 見えない玲は平気だ。

「ほら、 そこに」と 穂田里が指差す先を追い、
 衣都の肩に ポンと手を置いた。
 天狗は 慌てて飛び退き、 衣都の頭頂に避難するや、
 怒りにまかせて 一本歯の高下駄の片方を蹴り飛ばした。
 玲の鼻に命中し、 玲は 大きなくしゃみを二つした。
 くしゃみが収まると、 不思議そうに 自分の右手を見る。

「何かに触った感じがする」



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