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薬種狩り 六の5

 衣都が ふらりと戻り、
 採ってきた木の実や果物と、 持参してきた食料で 朝食を取った。
 そこからは しばらく下り、 小さな沢を渡る。
 谷川で顔を洗い、 口をすすいだ玲の機嫌も直って、
 それまで登ってきた尾根から 隣の尾根に移って登っていった。

 見晴らしの良い場所で休憩を取ると、 眼下に 昨日諦めた岩場が見下ろせた。
 上った先には さらに大きな岩が切り立っていて、 行く手を塞いでいるのが見える。
 無理して登っても 戻るしかなかったろう。
 雨をよけられそうな場所も 見当たらない。
 濡れた岩場を下る危険を考えれば、 あきらめて大正解だった。
 もしかしたら 進退きわまって、 雨の中で 雷に打たれていたかもしれないのだ。

 例によって 度々休憩を取りながら、
 遠回りになっても進みやすそうな経路を選んで 登っていった。
 玲は 少しずつ山道に慣れていったが、 道程の困難が増えこそすれ 減ることがない。
 しばしば穂田里が引っ張り上げなくてはならなかったりするので、 そうそう早く進めない。
 衣都の先導がなければ、 いくら体力があっても 到底踏破は叶わなかっただろう。

 遂に頂上にたどり着き、 目の前に連なる山並みを眺めれば 感慨もひとしおだ。
 振り返れば、 山裾からの遥かな距離が見渡せる。
 ところどころにもやが掛かって、 もう 何処を登ってきたのかさえ判然としない。

「一休みしたら、 下る」
 衣都が 手短に予定を告げた。
 しかし、 聞いているのか いないのか、
 雄大な景色に目もくれず、 衣都の首のあたりに、
 食い入るような視線を当てて離さない奴が居る。

「穂田里、 いい加減にしろ。 衣都に穴が開く」
 無遠慮な視線を遮ろうとした玲の手を、
 穂田里は 無造作に振り払った。

「いっちゃん、 聞いても良いか。
 いや、 何が何でも聞くぞ」
 思い当ることがある玲は、 ははあんと笑った。
 やっと 女の子だと気がついたのだろうと。

「いっちゃんの肩にとまっている、 赤鼻の ちっさいおじさんは何者?」



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コメント
1610: by 茶坊たがわ on 2013/09/04 at 20:27:38

こんばんわ

毎日楽しみにして読んでいます。
私、薬剤師なんで、よけいに興味深々です(*^-^*)

今日、四国カルストを撮った写真展にいったのですが
《天狗の森》があったので、びっくりしました。
「ここかぁ!」
そんなわけないですよね(笑)

1611: by lime on 2013/09/04 at 21:08:24 (コメント編集)

それ、誰ww

ここへ来て、新たな登場人物か!
いや、次回を待ちます。
いっちゃん、かっこいい^^

1612:Re: 茶坊たがわ様 by しのぶもじずり on 2013/09/04 at 23:23:17 (コメント編集)

いらっしゃいませ。
うわあ、本職だあ~。

はいはい、天狗森はあちこちにあるようです。
高知県、岩手県、茨城県、神奈川県、他にもあるかも。
お好きなイメージで、お読みください(笑)

天狗は、一説に、薬草と深い関係があるともいわれているようです。
いつもありがとうございます。お手柔らかに。

1613:Re: lime様 by しのぶもじずり on 2013/09/04 at 23:26:39 (コメント編集)

赤鼻の ちっさいおじさん登場です。

いっちゃんになり替わりまして、お礼申し上げます。
無口な女の子。だいじょぶでしょうか。

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