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薬種狩り 六の4

 もしかして 一人で行ってしまったのか、 と穂田里と玲は 慌てて周りを見回した。
 こんな場所に置いていかれたら、
 慣れない二人にとって、 何をどうしたらよいのかも分からない。
 遭難決定だ。
「いっちゃーん」
「おーい、 衣都、 出てこーい」
 必死に名前を呼んだ。

 すると、 下方の岩の陰から ひょっこりと顔を出し、 二人を確認してすぐに消えた。
 慌てて追いかけ、 巨岩を回り込むように下ってみれば、
 少し開かれて平らになった場所に出た。

 衣都は 岩の影に荷を下ろすと、 薪を拾い集めた。
「ここで野営か。 まだ行けるだろう」
 体力にいくらか余裕のある穂田里は不満顔だが、 衣都は 黙って空を指差した。
 黒く湧いた雲が近づくのが見えた。
 いつの間にか、 日もだいぶ傾いてきている。
「あらら、 そうか」

 間もなく、 ひさしのように張り出した岩陰に、 枯れ枝や枯れ草が積み上げられ、
 岩の窪みに 三人が身を潜めるのを待っていたかのように、 雨がポツリポツリと落ち始めた。
 岩棚は 地面から一段高くなっているから、 足元が濡れずに済む。
 上手く雨をやり過ごせそうだ。
 ほっとして 暗い空を眺めていた時だった。

 ズズゥーン  バリバリバリ
 耳をつんざくような轟音を連れて、 まばゆい光が目の前を走り抜けた。

「ひぃーっ」
「ぎゃあああああわわ」
 ひきつった悲鳴は玲、 見事な悲鳴は穂田里だ。
 瞬間、 辺りの空気が 色と匂いを変えた。

「吃驚した。 まだビリビリしてる感じがする」
 呆然と呟く玲の隣で、 穂田里が固まっていた。
 大量の雨が 音を立てて降り注いだ。

 雨は長居することなく 短時間のうちに 賑やかに通り過ぎて行き、
 一夜明ければ 嘘のように晴れた。
 岩の窪みに差し込む日差しに、 穂田里と玲が目を覚ますと、
 衣都の姿が見えない。

「衣都は何処だ。
 顔を洗いたい。 口をすすぎたい。 体も拭きたい。 腹が減った」
 朝から元気に不満を並びたてる玲に引きかえ、
 穂田里は 体を起こしながら「イタタタ」と節々を抑えて撫でさする。
 硬い岩の上で一晩過ごしたのだ。
 普通、 慣れていない人間はこうなる。

「玲は平気なのか」
「遅くまで勉強して、 床で寝てしまう事が良くある。
 問題無い」
 文句が多い割には、 意外に 丈夫な奴なのかもしれない。



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