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薬種狩り 六の3

 途中の町や村に泊まりながら駆け続け、 五日目の午後遅く
「ここまでで良い」と 衣都が一行を止めた。

 玲が 懐から地図を出す。
「隠忍の里の位置が どこまで確かなのか判らないとはいえ、 ここからでは遠くないか。
 もっと近い登り口がありそうだが」
「ここ」
 衣都は ほとんどの会話を 一言で済ませようとしているかのようだった。
 何の説明も無い。

 三人は 稲城たちと別れ、 近くの民家に一夜の宿を借りた。
 翌朝、 さっそく山に取り付いた。
 先頭は 案内役の衣都。
 次に 手槍を杖代わりに歩く穂田里。
 しんがりは 穂田里が迷子になるのを防ぐための監視を担って 玲が歩くつもりだったが、
 いくらも進まない内に 玲が音を上げた。

「おい、 待て。 ハアハア…… 僕は疲れた」
 先を歩いていた二人は立ち止って、 振り返った。
 衣都は 無表情に、 穂田里は 呆れた顔で。
「えっ、 もう?  歩き始めたばっかだぞ」
「休憩」と、 衣都。

「おいおい、 いっちゃん、 玲を甘やかしすぎ」
「冗談だろ。 五日間も馬で走り詰めだったんだ。 平気な君たちの方がおかしい」
 玲の自己主張は 山の中でも堂々としている。
「そうかなあ。 麦兄は 馬の扱いがすごく上手い。
 ただ乗っかっていただけなんだし、 玲が 一番楽をしたはずなんだがなあ」
「休憩」

 その後も 申し訳ない素振りさえ見せることなく、 「疲れた」を連呼する玲と、
 無駄に元気いっぱいだが、 とかく見当違いの方向に進みたがる穂田里を率いて、
 黙々と登る衣都の行く手を、
 やがて 大岩が壁のように屹立する岩場が立ち塞いだ。

「無理」
 玲が 一言のもとに拒否宣言をした。

「玲は 俺が引っ張り上げてやる。
 分かった。 おんぶして登ってやろう」
「嫌だ。 ぜぇーったいに断る」
 どちらも譲らないから 押し問答になる。
 静かな深山に、 すったもんだの二人の声が 無駄に響き渡った。

「あれっ、 いっちゃんは何処だ。
 俺たち見放されたか。 それとも迷子になったのかな」

 気が付けば、 衣都の姿が見えない。



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