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赤瑪瑙奇譚 第四章――5



 翌朝、 春の離宮前には、 なぜか ホジロまでが来ていた。
 しかし、 春の離宮は 厳重に閉じられ、 あちこちに 鍵までつけてある。

「どうなってるの。 いつもこんななの?」
「いや、 管理している留守居役が 居るはずなんだけど」

 仕方なく 周りをうろついてみると、
 門の脇の門衛詰め所に、 手持ち無沙汰にしている門番とおぼしき男が 一人いた。
「あれ、 一人なのか?  何故閉まっているのだ。 中を見たいのだが」

「あっ、 これはカムライ殿下。 すみません。
 修復工事を請け負っているアトメという大工が、 工事中は危険だからと 立ち入り禁止にしてしまったのです。
 大掛かりな工事になっておりまして、 メギド様からも 言うとおりにしろとのお達しなのです。
 申し訳ございません。
 しかも、 今は 内装用の資材が 遅れているとのことで、 工事が休みに入っていて、
 開けられる者も、 ご案内できる者も、 居りませんのです」
「分かった」
 これ以上 この男に何か言っても 無駄なだけだろう。

 さっさときびすを返すカムライを追いかけて、 ユキアが言った。
「ますます 中が見たくなったわ。 いったい どんな工事をしているのかしら」
「ユン、 ホジロ、 こっちだ。 任せておけ」
 二人を連れて、 ずんずん歩いていくと、 裏木戸のようなところに着いた。

「ここで 少し待っていろ」
 カムライ一人で どこかへ行ったが、
 めきっ、 どさっ、 という音が、 少し離れたところから 聞こえたかと思うと、 木戸が開いて、
 隙間から カムライの手が出て、 手招きをした。
 入ってみると、 かなり広い。
 余った資材らしきものが、 庭に いくつか積まれている。
 門の厳重さに比べて、 中はが らんと無防備に 人気(ひとけ)が無い。

「こっちだ。 ああ、 やっぱり入れる」
 三人で、 誰もいない離宮の中を 歩き回った。

「あれっ?  いったい 何処を補修したのだろう。 ほとんど変わっていない。
 第一、 この離宮は 一番手入れが行き届いていた。 宮城を 先に補修したほうがいい くらいだったのだ。
 何処を直したのか分からない」
 カムライは不審そうに、 触ったり 眺めたりしながら 進んでいった。

 いつの間にか ホジロがはぐれて 二人になった。

 応接室に使っていた部屋に入ったとき、
 やっと 以前と変わっているものを見つけたカムライが、 嬉しそうに 何かを動かした。
「あっ、 これは 前には無かったな。
 おお、 動くぞ、 何だこりゃ。 分からん」

 そうして、 二人揃って 一歩 部屋の奥に踏み出したとたん、 足元の床が 消えた。


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by まとめwoネタ速neo on 2012/05/28 at 19:07:22

 翌朝、 春の離宮前には、 なぜか ホジロまでが来ていた。 しかし、 春の離宮は 厳重に閉じられ、 あちこちに 鍵までつけてある。「どうなってるの。 いつもこんななの?」「いや、 ...

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