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薬種狩り 五の4

 能天気な勇者に、 典薬頭は 首を傾げた。
「親の私が言うのもなんだが、
 玲は 足手まといにしかならないと思うが」
 玲が、 ほら見ろ という顔をする。

「実は、 俺には 親友の玲にしか打ち明けていない秘密があります。
 そのせいで、 俺一人では無理なんです」
 問いかける視線が 二人分、 玲に集まった。
「知らない。 打ち明けられた覚えは無い」
 玲は ブンブンと首を横に振る。

「あれえ、 そうだっけ。 おかしいな。
 まあ良いか。
 なにしろ 武官になりそこなったのも、 その秘密のせいなんです」
「だから何なんだ。 言わなきゃ分からん」
 代表して玲が、 催促した。
「あははは、 そりゃそうだ。
 俺の体には、 驚異の身体能力と 強力な方向音痴が同居してるんだ。
 変だろ」
 いや、 体の問題なのか?  と首をひねった三人だったが、

 次の瞬間、
「あっ、 思い出した」
 典薬頭が素っ頓狂な声を上げた、
「うううう、 私も噂に聞いた事があります」
 左右衛が唸った。
「方向音痴がひどくて 武官をクビになったというのは、
 穂田里、 君だったのか」

 穂田里は、 ある意味有名人だった。
 代々 優秀な武官を排出する名門の家に、 ひときわ武術に優れた少年が居た。
 嘱望しょくぼうされ、 若くして位を受けたが、 あっという間にクビになった。
 野営訓練で迷子になり、
 とんでもない場所で発見されて 連れ戻された甲斐も無く、
 しょうこりもなく すぐに迷子になった。
 野営訓練のはずが 迷子捜し訓練になってしまった。
 とか、
 二軍に分かれて 実戦をした訓練では、 方向を見失い、
 味方の本陣をたった一人で壊滅。
 敵軍に 圧倒的大勝利をもたらしたとかすれば、 クビにするには 十分な理由になる。
 なまじ強いだけに 余計に始末が悪い。

 こんなのが居ては、 勝てる戦に絶対負ける。
 どうやら 穂田里一人では、
 目的地どころか どこにもたどり着けそうもない。

「天狗森でも うっかり遭難するところだった。
 『招き猫じゃらし』が手招きしてくれなかったら、 絶対に遭難していた」

 穂田里は頭をかきかき、 照れながら 更に怪しい事を口走る。



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1590: by lime on 2013/08/27 at 20:42:19 (コメント編集)

穂田里、仲間だ!
私も信じられないほどの方向音痴だから。
招き猫じゃらしが、欲しいな・・・。(ショッピングモールや街中に生えていてほしい)

1591:Re: lime様 by しのぶもじずり on 2013/08/27 at 22:14:01 (コメント編集)

「招き猫じゃらし」は、私の願望でもあります。
私も街中やショッピングセンターに出て欲しいです。
limeさんのお仲間です。
野山では意外に迷わないのですが、街中やビルの中がヤバイです。
ひどい時には、上下も分からなくなり、自分が地下に居るのか、地上に居るのかさえ怪しくなります。

でも残念ながら、「まねきな子じゃらし」は、一応幻想植物のくくりですので、
森や山に出ることになってます。
街に欲しいかもう。

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